音声認識技術を核に各種業務用ソフト開発などを手掛けるアドバンスト・メディア。同社株の急騰劇が小型株市場で話題を集めている。
アドバンスト・メディア株は1月中旬、材料浮上をきっかけに3万円台半ばから5万9900円(1月22日高値)まで急騰。その後、4万1000円近辺まで調整していた2月末に再度動意付き(株価が動き出し)、1月22日に付けた高値を更新して6万7500円(3月1日)まで駆け上がっている。
連続赤字を計上し続け、2010年3月期も連結経常損益は3億9500万円の赤字を計画。赤字幅こそ前期から縮小しているが、連続赤字によって決算書には継続前提に対する重要事象が記載されており、収益力の弱さのほか、財務面にも懸念が持たれる状況にある。
そんな状況下にあるなぜ、アドバンスト・メディアの株価がなぜ上がるのか? それは材料性の強さにある。
株式市場では株価を動かす理由を「材料」と言うが、業績面よりも材料重視で株価が動く銘柄を「材料株」と呼ぶ。かつて仕手戦を繰り広げたような東証1部市場上場銘柄に多く使われる名称だが、アドバンスト・メディア株は新興市場に上場する数少ない材料株として名をはせる。アドバンスト・メディアは業績がともなわなくても、株価を動かす強い材料を持つ。1月中旬、2月末に会社側が出した材料はともに有力ビジネスとして期待されるiPhone関連だった。
1月23日の取引時間中、iPhone向け音声認識技術 「AmiVoice」が、同じマザーズ上場のフライトシステムコンサルティングのiPhone向けTwitterクライアント「TweetMe」に採用されたことを発表。2月末は、みずほ情報総研と共同で、iPhone 3GS向け営業支援システムに対応する「音声認証」機能を開発し、AIGエジソン生命保険に提供、導入すると発表した。アドバンスト・メディアの音声認識技術はその応用範囲の広さから将来を嘱望されていたが、これまでは議事録システム向けや医療用向けなど地味なビジネスが多かった。ここにきてiPhone関連の発表が相次ぎ、再び将来性への注目度が増しているようだ。
ただ、これらの発表は株価材料としてのインパクトは大きかったものの、業績面への寄与度は未知数。コスト削減などが寄与して2011年3月期は黒字浮上が期待されるが、業績面から買うにはまだ時間が必要そうだ。
アドバンスト・メディア株人気の背景には株式市場の状況も大きな影響を与えている。株式市場は3月期末に向け、企業同士の株式持ち合い解消売りなどにより、需給環境が悪化するシーズン。決算発表の端境期で手掛かりも少ない。中でも、若い企業が多く持ち合い解消売りへの懸念が乏しい新興市場上場銘柄に資金が流れている。東証マザーズ指数は3月1日まで6営業日続伸。大きな資金が動きづらい相場で少ない資金でも大きく値が動く銘柄を手掛ける流れとなっている。株式市場の動向次第では、アドバンスト・メディア株の人気が今後も続きそうだ。
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