バルセロナ発--「BlackBerry」のメーカーであるResearch In Motion(RIM)は、「BlackBerry Enterprise Server(BES)」ソフトウェアの無料バージョンを提供し、ビジネスユーザーの顧客をつなぎとめようとしている。
RIMの共同最高経営責任者(CEO)Mike Lazaridis氏は現地時間2月16日、BESの無料バージョンである「BlackBerry Enterprise Server Express」について、中小企業や携帯電話からの社内電子メールへのアクセスを可能にしたい企業向けに提供する予定であることを、当地で開催のMobile World Congress(MWC)の基調講演で明らかにした。
BES Expressは、BlackBerryシリーズの携帯電話と「Microsoft Exchange」または「Microsoft Windows Small Business Server」との同期を実現する。これまでRIMは、社内の電子メールへのアクセスに加え、高いセキュリティも実現するBESを使用している全企業に対して、ライセンス利用料金を請求してきた。
しかしながら、RIMは3月より、BESのほぼ全機能を無料で利用可能にする。新たな無料バージョンは、「Microsoft Exchange 2010/2007/2003」に対応する予定だ。BES Expressには、電子メール、予定表、アドレス帳、メモ、仕事リストへのアクセス機能が含まれる。また、BlackBerryのユーザーが、「Microsoft Word」「Microsoft Excel」「Microsoft PowerPoint」の編集作業をしたり、社内ネットワーク上に保存されたファイルにアクセスしたり、ファイアウォール内の他のビジネスアプリケーションを使用可能にする。
Lazaridis氏は、BES Expressでも、有料バージョンのBESと同じセキュリティアーキテクチャが用いられているため、顧客がセキュリティを犠牲にする必要はない点に注意を喚起した。
しかしながら、特定の機能が無料バージョンでは省かれることになる。たとえば、今後もRIMは、さらなるセキュリティポリシー、モニタリング機能、より高度な利用可能水準を求める企業に対しては、「BlackBerry Enterprise Server 5」のサブスクリプションを推奨していく方針である。
さらに、Lazaridis氏は、テレビ会議、「エンタープライズクラスのソーシャルネットワーク」やオフィス内線網の交換機(PBX)との統合など、新たに有料バージョンのBESで追加される複数の機能も発表した。
RIMは、無料のBES Expressを通じて、2つの市場をターゲットにしようとしている。まずは中小企業がターゲットに挙げられ、社員にBlackBerryの企業向け電子メールソリューションを使わせたいと考えているものの、大企業向けの高度な他のサービスまでは必要としていないというケースが対象となる。さらに、企業の大小に関わらず、従業員に対してBlackBerryからの社内電子メールへのアクセスを提供したいと願う全企業がターゲットとなる。
ビジネスユーザーの顧客は、RIMの創業以来、これまで同社にとって不可欠な得意先となってきた。とはいえ、多くの企業がRIMに代わる存在を模索し始めるようになり、Appleの「iPhone」を始めとする対抗企業がRIMの顧客層に食い込んできている。サーバライセンス料金の削減でコストを下げようとしている企業もある。また、自分が日頃から用いているデバイスを仕事にも活用したいと願う社員の要望を受け入れざるを得ない企業もある。
15日にMicrosoftが発表した、新たなモバイルOSの「Windows Phone 7」も、RIMにとっては脅威を増す存在となっただろう。Microsoftも、これまでビジネスユーザーの顧客向けにモバイルソフトウェアを提供してきた歴史がある。そして、もし新たなOSが人気を博することになれば、MicrosoftがRIMから企業の顧客を奪うことになりかねない。
とはいえ、BESの無料バージョンの提供により、RIMは、コストという障壁を基本的に取り除くことができた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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