“本物”のクラウドサービス展開を視野に低コスト構造を堅持--さくらインターネット田中社長 VS.ネット事業者 - (page 3)

別井貴志(編集部) 青山祐輔2010年01月27日 13時21分

クラウドの新展開と低価格路線の継続に注力

--実際に使ってみて、マネージドサーバはどんなユーザーにお奨めできると思いますか。

小山氏:私は、スタートアップ企業にぴったりだと思いました。最初の1台として導入して、2〜3年使うには十分なパフォーマンスだと思うんです。

 1つだけ心配なのは、サーバOSの「FreeBSD 7.1」で動いている御社の上位サービスって他にないので、スケールアップする際にそのまま移行できる先がないことですね。ですから、今後は同じような環境で使える専用サーバか、CPUにCore 2 DuoとかXeonとかを搭載したマネージドサーバがあると、みんな安心して使えるんじゃないでしょうか。

田中社長:企業にとってスケールアップは重要ですよね。約束はできませんが、ご指摘いただいた内容は今後数カ月で実現するよう努力します。

--スケールアップという意味では、全体のサービスプランのラインナップをどう見ていますか。

吉田氏:僕は、さくらのレンタルサーバのスタンダードとプレミアム、ビジネスプロを使っているんですが、最近はプレミアムの位置づけが難しくなっていませんか。もう少し特徴があるといいと思うのです。

田中社長:そういう面はあるかもしれません。昔は最上位のプランということで申し込んでいただけましたが、今の売れ筋はスタンダードなんです。一時期、ライトがすごく人気だった頃があったんですが。ちなみに、プレミアムは何があったら差別化できると思いますか。

吉田氏:プレミアムはデータベースが1つしか使えないので、複数にしてほしいです。それによって、構築できるサイトの数が増えるんです。

田中社長:なるほど。ちなみに、データベースだけを独立して提供できないかということも議論しているんです。というのも、実は、当社は日本で一番SaaS方式でMySQLを提供している企業じゃないかと思うんです。10万個以上のデータベースが作られているので、日本でもっともMySQLのホスティングをやっていると言えるでしょうね。

 すでに運用ノウハウが蓄積されているので、数百円の低価格でMySQLだけのホスティングを提供して、レンタルサーバと連携できるといった具合なら利用してもらえるのではないかと考えています。

--そのほか、今後どのようなサービスや戦略が議論されているのでしょう。

田中社長:まず既存のサービスについては、レンタルサーバサービスは共用レンタルサーバ「さくらのレンタルサーバ」と専有レンタルサーバ「さくらのマネージドサーバ」の2つあるんですけど、専有レンタルサーバについてはさらにスペックの高いサービスに仕上げていきたいと思っています。

 レンタルサーバサービスの上位プランの専用サーバ(root権限をお客様にご提供するタイプ)については料金をさらに下げようという話をしています。CPUはAtomですが、VPS(仮想専用サーバ)と変わらない料金で、申し込んだらすぐに使えるようなかたちで。

 月額5000円を下回ることが実現できれば、魅力的ではないでしょうか。そうなると、マネージドサーバよりも安いですから、料金的にはオーバーラップします。ですので、当社がこれまでやってきた、専用サーバと共有サーバを縦に並べて順番にスペックアップしていくというサービス構成ではなく、完全に並列で置いていくというように、既存サービスはしていきます。

 その中で、共有サーバの上位プランというのは、シームレスにスケールアップしていき、高いパフォーマンスが必要なサイトでも使えるようにしていく方針です。

--少し話題を変えますが、最近は「Amazon EC2」など、海外のクラウドサービスを利用する向きも出てきていますが、どう見ていますか。

小山氏:やっぱりレスポンスが気になるんです。海外だとレイテンシ(データ転送の要求を出してからその結果が返ってくるまでの遅延時間)が150〜200msec(ミリ秒)くらいですが、マネージドサーバで試してみたところ15〜20msecで動いてくれるので、そこは開発者としてとてもやりやすいですね。

田中社長:おっしゃるとおり、海外だとRTT(Round Trip Time、往復遅延時間)が悪くなってしまいますね。だいたい西海岸のデータセンタだと100msec前後で、東海岸だと150〜200msecです。およそ100msecを越えると人間は体感できます。特にシェルでログインしてエディタを使っていると、レスポンスが気になりますね。

小山氏:海外だとSSHがとにかく遅くなるので、その点でマネージドサーバは期待できますね。

田中社長:本当はAmazon EC2とかSlicehostみたいなものが、国内にあれば一番なんでしょうけど(笑)。

--さくらインターネットで、手がければいいじゃないですか。2009年に設立したさくらインターネット研究所の研究テーマには、クラウドコンピューティングも入っていたと思いますが。

田中社長:そうですね。当社のミッションとして、それは必要だと考えていて、クラウドサービスはぜひやりたいです。ただ、なんちゃってクラウドみたいなものはやりたくないんです。だったら、安い専用サーバを突き詰める方がよいと思っているので。

 イメージしているのは、ネットワークとCPUノード、ストレージが仮想化できて、そのネットワーク内にデータベースだけのインスタンスを貸しだすという感じです。

 そういうサービスを今年から来年にかけて出していけたらいいと思っています。それができれば、おそらくAmazon EC2に対抗できる日本で初めてのサービスになると思っています。

--さくらインターネットの大きな魅力の1つに低価格路線があると思いますが、これは今後も継続していきますか。

吉田氏:たしかにコストパフォーマンスはいいですね。

小山氏:どうやってこれでやっていけるのか、ビックリするんですけど。

田中社長:構造的に料金を安くするというのは、我々のモットーになっています。たとえば、さくらのレンタルサーバ ライトがなぜ月額125円でできるのかというと、サーバを自社で作って、データセンターを自社で作っていて、他社だと1ラックに30台しか入れないところ、自社でラックを設計しているので100台以上入れて運用するといったことに取り組んでいます。全体の最適化をとにかく追求しないといけないんです。サービスからファシリティまでを一気に設計しないといけない。

 ですから、たとえば先ほど申し上げたクラウドなどは、東京のデータセンターを使うとやはり高くなるんです。地方にデータセンターを建設しないといけないかもしれません。こうしていけば、同じ品質で他社の半分くらいの料金だったり、同じ料金だったら倍くらいのスペックだったりということが追求できます。

 サービスの企画も重要ですが、それを支えるインフラ、構造的な低価格コストを実現して、エブリデイロープライスみたいなものを出せるようにしていきます。ここ2〜3年は、これをさらに突き詰めていくべきではないかなと思っています。

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