“日本発グローバル”を達成するために必要な5つの成功要因 - (page 2)

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 ここで重要なのは仮説が正確に未来を占ったかではなく、一本筋の通ったストーリーとしての仮説を自社の中で持つことであり、仮説の立案、検証というPDCAを繰り返し回していくことで、世の中の変化に対応していくことである。現在であれば米国のPC向けSNS上での大手SAPのぶつかり合い、スマートフォンの覇権争い、日本のモバイルSNS上でのソーシャルアプリの立ち上がりなどから、自社なりのView of the World(世の中の大きな方向感)の仮説を作ることができるのではないだろうか。

2.初期からグローバルを意識した戦略

 直近の戦略を立てるにあたり目先の国内市場で勝つことだけを考えるのと、将来的なグローバル進出を見据えるのとでは、戦略の内容も、グローバル展開を図る際の容易度も変わってくる。では、グローバルを見据えた戦略とはどのようなものだろうか。

 まずは、グローバルで普遍的なニーズをターゲットとして自社製品やサービスを作り込むこと。例えば、グローバル展開を意識している海外SAPと議論していると、マズローの5段階欲求(生理的欲求、安全、帰属、承認、自己実現)やキリスト教の7罪(傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲)など人の根源的欲求を刺激、充足するアプリ設計が重要だという話が頻出する。

 また、グローバルのリングで通用する自社ならではの競争優位性に磨き上げることも重要だ。自社の強みにのみ徹底的に集中し、その強みをてこにグローバルを攻め、それを更に強化する。例えば、mixiオープン化前は日本だけを見れば牧場アプリはオープンスペースだった。

 しかし、世界に目を向けると大手SAPであるZyngaの「FarmVille」(2009年12月現在7000万MAU)など強大なユーザーベースとブランドを誇っているアプリが何本もあった。一方で、ゲーム性の高い領域(育成、シミュレーション、RPGなど)は世界でもオープンスペースになっていた。世界を目指すためにはいわゆる牧場系アプリよりも、自社の強みと合致するのであればゲーム性の高い領域で徹底的にエッジを立てていった方が有利だろう。

3.徹底したオペレーションエクセレンス

 グローバルを舞台にした競争環境では熾烈な情報戦とオペレーション勝負が繰り広げられている。それを征するには、あらゆる局面で高速でPDCAのサイクルを回していくオペレーションエクセレンスが重要になってくる。すごいスピードで日夜世界のどこかでベストプラクティスが開発され、日夜それが分析、改善されている。例えば、2008年11月牧場系アプリの先駆けとなる「Happy Farm」が中国で登場してから約1年間が過ぎたが、牧場系アプリは“オマージュ”され、改善されながら世界中に広まっている。

 Facebookアプリのゲームカテゴリトップ30のうち6本(2009年12月現在月間アクティブユーザー数、出所:Inside Facebook)、mixiアプリトップ10のうち2本(2009年12月現在累積登録ユーザー数、出所:mixiアプリWatcher)が牧場系、ゲームシステムが同じレストラン系なども含めるとさらに数は増える。オペレーションのレベルでは激しい改善合戦が繰り広げられ、トラフィック獲得・回遊、ユーザーのエンゲージ、マネタイズにおいて競合を研究しながら、自社の創意工夫を加えてしのぎを削っている。もはやオペレーションエクセレンスは差別化要因ではなく、参加するための必要要件とすら言える。

4.グローバルコミュニケーションスキル

 単純な語学力という意味ではなく、グローバルなビジネスシーンでのコミュニケーションのプロトコル(流儀)にのっとることが重要となる。

 言いたいことをまず最初に伝え、「Yes」「No」という意思をはっきりとさせる。日本的なやわらかな遠回しな表現や謙遜(けんそん)は外国人にとってはメッセージをあいまいにしているだけである。一方で、本質論として、Win-Winのスキームを準備することが重要だ。ビジネスコミュニケーションにおいて普遍的な話かもしれないが、相手にとって何が嬉しいのか、自社はどのように相手に価値を出すのかを明確にしておくことが長期的かつ成功する関係性のためには必須だ。

 日本のベンチャーでは「英語ができないから」と引っ込み思案になるケースが多い。しかし、言葉がつたなくても自分の意思をしっかり伝え、相手にもGiveできるスキームをお土産として準備していけば、ハードルはそれほど高くないものである。特に、モバイルのサービスモデルやコンテンツおいては、海外勢も日本から学ぼうとしている意思が非常に強い。

5.グローバルマインドをもったチーム

 最後にはなるが、もっとも重要なのは経営チームがグローバルの視座を持つことだ。シリコンバレーでは中国系やインド系、ラテン系アメリカ人など多様なバックグラウンドをもった人種がベンチャーのスタートアップに参加する。すると必然的に中国やインド、ラテンアメリカ市場への展望がを視野に入れることになる。日本ではシリコンバレーのように多様な人種によるチームを作ることは難しい。だからこそ、「中長期的にはグローバル展開をする」という確固たる意思を持つことが重要になってくる。

 筆者自身、ベンチャーキャピタリストとして、日本のベンチャーのグローバル展開をサポートし、日本発の世界企業の輩出をサポートすることが使命だと感じている。私達自身の海外事業展開支援力は勿論、各国の戦略提携先候補となる事業会社やVCとの関係性を強化しており、グローバル展開のためのブースターとなりたいと考えている。次回は、グローバル展開を強く意識しているビデオゲーム、ソーシャルアプリメーカーのQ Entertainmentを事例にグローバル展開のKSFをより具体的に見ていきたい。

高宮慎一

グロービス・キャピタル・パートナーズ

シニア・アソシエイト

グロービス・キャピタル・パートナーズでは、IT/モバイル領域での投資を行う。特に、ソーシャルメディア、ソーシャルアプリなどコンシューマ向けサービスを担当。TwitterのIDはs1kun。 戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルにて、プロジェクト・リーダーとしてSI/ITサービス企業向けに事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略を立案。東京大学経済学部卒、ハーバード大学経営大学院MBA卒。

グロービス・キャピタル・パートナーズは、グロービスグループの持つ経営ノウハウおよびネットワークを駆使し、創業段階および成長段階の起業家・ベンチャー企業に対し、事業資金の提供のみならず、企業成長のために必要となる「ヒト(人材)」「カネ(資金)」「チエ(経営ノウハウ)」を総合的に支援するハンズオン型ベンチャーキャピタル。
設  立:
1996年
運用総額:
約400億円

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