WEBにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。「永谷園生姜部(しょうがぶ)」の活動には、人間の感情を刺激するストーリーがありました。
「永谷園生姜部」は、お茶漬けで有名な永谷園で、社員自らが立ち上がって作られた“部活動”です。2007年に発売された「冷え知らずさんの生姜シリーズ」のヒットをうけ、2008年9月に発足。「生姜に笑い、生姜に泣く」をモットーに、本気で生姜に取り組み知識と理解を深めるための組織で、部員たちは社内の部署や職位に関係なく集まっています。
専用の試験農場も整備。多少時間がかかっても、本物をつくるために、部員ひとりひとりが実際に見て、さわって、育てて、しっかり味わう事を大切にして活動しています。
生姜部の活動は随時ブログにアップされています。Webサイトでは、素朴な歌声が妙に耳に残る「生姜部の歌」が聞ける他、生姜を使ったレシピを170以上も紹介されていて、そのすべての作り方が動画で見ることができるようになっています。
また、社外生姜部員を募集。書類審査と面接の入部試験に通った特別生姜部員17名は、社内生姜部員と一緒に、生姜の収穫、商品開発、レシピムービーへの出演などの活動をしています。それ以外はオンライン生姜部員として、生姜部マガジン「生姜だより」を配信。また商品モニターなどにも参加してもらっています。
永谷園生姜部は、色々なメディアで取り上げられ話題になっています。また生姜部から、色々な新商品も生まれています。では、何が多くの人の心を引きつけたのでしょうか?
それは生姜部の活動にストーリーがあったからです。社員たちが手作りで、生姜を育てたり、料理のレシピを開発したりしていくストーリーは、サイトを訪れる人たちにとって、テレビのドキュメンタリーを見るような感覚になりました。部員たちが楽しそうにやっている雰囲気が伝ってくるのも好感がもてました。部員たちのキャラも徐々に浸透し、視聴者にとっても見る楽しみがうまれます。
また途中から、社外部員を募集したことも、インタクティブな関係を強めました。その試験の模様も、ブログにアップされていくので、応募に漏れた人たちも、社外部員たちがどのように活動していくのか興味を持つことができたのです。
永谷園生姜部の活動は、このような部員たちによって作られるモノであれば安心だ、という商品イメージを高めました。結果として、生姜関連の商品は永谷園というイメージを作ることにも成功したのです。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。 あなたの会社のWEBコミュニケーションには、インタラクティブなストーリー がありますか?
◇ライタプロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に「あの演説はなぜ人を動かしたのか」(PHP新書)
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