「書店営業ツイッターの旅」のストーリー

 WEBにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 ミリオンセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者山田真哉氏による「書店営業ツイッターの旅」には、人間の感情を刺激するストーリーがありました。

 現在、ブームになっている140字以内のつぶやきで繋がるマイクロブログ「Twitter(ツイッター)」。「書店営業ツイッターの旅」は、そんなTwitterを使った日本初のユニークな書籍プロモーションです。

 プロモーション自体は、新刊の発売に合わせ、山田氏自身が自腹で全国の書店をまわり、本を置いてもらうようにお願いするというもの。著者による一般的な書店営業との違いは、どの時間にどの書店に行くかをTwitterで告知し、そこに集まってきてくれた読者に、自身が制作した同人誌『山田真哉の玉手箱Vol.1』をプレゼントするという仕掛けです。

 また、書店での様子や掛かった費用等もすべてTwitterで公開し、書店情報、交通経路、ご当地のグルメ情報などもTwitterで募集します。普通ならば著者及び編集者が書店をまわるだけのイベントに、一般人も巻き込み、販促や話題づくりに繋げようという試みです。10月17日の神戸を皮切りに、11月28日の名古屋〜津まで、週末を中心に全国19都市を回る予定。またその日の出来事は、後日、特設サイトにまとめられアップされます。

 仕掛け自体は単純ですが、このプロモーションは全国紙にも取り上げられ、一部で大きな話題を集めています。では何がメディアや多くの人の心を掴んだのでしょう?

 それは、このプロモーションが一般の人々が参加できる、ストーリーを作っているからです。Twitterそのものが、インタラクティブ性の強いメディアですが、リアルでのイベントを絡めることで、よりインタラクティブ性が強まりました。実際に書店に行く人はもとより、行けない人も「今、どこの書店にいてどんな感じなのだろう」と、山田氏の行動が気になり、Twitterでフォローするようになったのです。

 実際に、10/17〜19の神戸・大阪遠征で、山田氏は財布を紛失するというアクシデントが発生しましたが、それをTwitterでつぶやくと、多くの人からの励ましや情報提供があり、とても励まされたといいます。インタラクティブなやりとりが、著者と読者を一体化させ、ストーリーを紡いでいったのです。

 このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のWEBコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタプロフィール
 川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に「価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ」(クロスメディア・ パブリッシング)

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