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ツイッター発のIR情報騒動で知る公平開示規則

米山徹幸(大和総研)2009年10月21日 15時04分
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 ツイッターがIR関係者の関心を集めている。ミニブログともいわれ、短文で素早く他の会員と情報を交換できるライブ感で、ユーザーの好感度も高いことからその浸透ぶりは加速的だ。

 そんな勢いの中、業界の英有力誌「IRマガジン」(09年9月号)が「沈黙期間とツイッター」と題する記事を載せた。米国のカジュアル系チェーンレストラン、ルビー・チューズデイの創業者でCEO(最高経営責任者)のサンディ・ビール氏が自社の資金調達についてツイッターに書き込んだ行動をめぐる動きを取材した記事だ。

 この7月のことだ。ルビー・チューズデイがセカンダリー・オファリング(注:大手株主が保有する発行済みの株式を投資銀行が購入し、これを公募販売すること)を発表すると、ビール氏はツイッターに「当社ブランドのさらなる強化にニューヨークで約7,000万ドル(約66億5,000万円)の株式資金調達を行う」と書き込んだ。

 ニューヨークというのはニューヨーク証券取引所のことだ。地元紙ニューズ・センティネル(テネシー州)のキャリー・ハリントン記者がこのツイッターの書き込みを記事に引用した。「ツイッターはビール氏のコミュニケーションラインです。これを使ってビール氏は公共フォーラムで情報発信を行っており、私たちは彼が企業に代わって話していると思いました。というわけで、これは記事にする意味があると考えたわけです」と「IRマガジン」に語った。

 IRの関係者なら、ここから2つのことが頭をよぎる。

 1つはビール氏のツイッター書き込みが株式公募に関する米証券取引委員会(SEC)規則に違反しているかどうかである。これの場合、幸いなことに、すでに発表したプレスリリースや証券取引委員会(SEC)に届け出た仮目論見書で情報開示した以外のことがツイッターで開示されたわけではなかった。たしかに、ニューズ・センティネル紙の記事に引用された7000万ドルの資金調達というのは、ルビー・チューズデイのプレスリリースにも仮目論見書にも言及がない。しかし、公募する株式数と仮目論見書に書かれた最終引値の株価を参照すればほぼ7,000万ドルという計算ができるから、問題はないだろう。

 もう1つは、このツイッターでの情報発信が発行体に代わって証券購入をオファーしたものと見なされるかどうかという点だ。発信したツイッターのアカウントが同じ企業の名前ならともかく、今回はこれに該当しないとする法律家のコメントを「IRマガジン」は掲載している。

 こんな場合、社内の法務部はCEOは公募期間中にツイッターやEメール、フェースブックといったソーシャルネットワークで発行株式の売れ行きなどに関する情報に言及することは控えてもらいたいと求めるはずだ。たしかに、CEOのような立場にある人が公募に関連して何か発言するのは決して賢い行動とはいえないだろう。たとえ、そのメッセージに自分が公募に個人的にかかわっているということ以外に新たに重要なことがなくても、である。

 これも、並はずれたツイッターの浸透で巻き起きたエピソードの1つだ。しかし、ここで決して見失ってはならない論点がある。それは、どんな重要情報も受信先を問わず、同時に同じ内容をできる限り広くいきわたらせるとした公平開示規則である。それがIR情報を論じる出発点である。

◇ライタプロフィール
 米山徹幸(よねやま てつゆき)
大和総研・経営戦略研究所客員研究員。最近の論文に「英米の規制当局、空売り情報の恒久開示に動く」(「広報会議」09年11 月号)、「IR活動を評価するトンプソン・チェックリスト」(「月刊エネルギー」09年10月号)など。9月29日、日本アドバタイザーズ協会・WEB広告研究会の第7回Webクリエーション・アウォードで「WEB仕事人」に選ばれる。

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