国立情報学研究所は9月17日、スクリーンやディスプレイに表示された映像の盗撮を防止する技術を開発したと発表した。映画館での盗撮を防ぎ、作品の著作権などを保護する技術として提供したい考えだ。
開発された盗撮防止技術は、人間とデジタルビデオカメラなどの機器が光を感知できる領域の違いを利用して、スクリーンやディスプレイに“光のノイズ”を表示するというもの。人間の目の可視域が380〜780ナノメートル(nm)に対して、CCDやCMOSイメージセンサを搭載したデジタルビデオカメラの可視域は200〜1100nmという。ノイズの光源として780〜2000nmの近赤外線を用いることで、デジタルビデオカメラにはノイズが映るが、人間はノイズを気にすることなく映像を見られるとしている。
ノイズは、スクリーンの背後に「ノイズ光源ユニット」を設置することで発生させられる。既存の機器に新たな機能を追加する必要もなく、またスクリーンを加工する必要もないため、安価に導入できるという。試作品は数十万円としているが、商用化の時期や価格については、「今はまだ研究段階でビジネスモデルを検討中」(越前氏)としている。
この盗撮防止技術は、国立情報学研究所の准教授である越前功氏とシャープの共同で開発された。これまで盗撮を防止する対策には、懲役や罰金を課す法律のほか、作品に各映画館のIDを埋め込む「電子透かし」という技術が用いられていた。
もともと電子透かしの技術を研究していたという越前氏は、「電子透かしでは、盗撮そのものの行為を防止することはできない。また、不正DVDなどから電子透かしを検出し、映画館を特定できたとしても、撮影者を特定するのは難しい」と指摘した上で、「これでは不十分だと思う。既存の機器で防止できるようにしたい」(同氏)と開発の背景を語った。
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