KDDIは8月27日、1985年の通信自由化から現在までの競争環境と課題について説明会を開催した。
固定電話市場における競争の歴史を振り返り、自由化前の国内通話料金は、東京−大阪間(平日昼間3分間)で400円だったという。その後、1987年にDDI、日本テレコム、テレウェイなど新電電(NCC)が参入することで競争化し、2001年には3分80円まで下がった。国際電話も同様で、KDDが独占していた時代、日本−米国間(平日昼間3分間)は1240円。国際系のNCCが参入することで、2000年に160円まで下がったとした。
KDDIは、競争事業者が参入するまで、加入電話基本料の値下げもなく、逆に基本料を値上げすることもあったと指摘。KDDI 渉外・広報本部 渉外部長の古賀靖広氏はこれらの経緯から「独占のときは値下げや廃止の発想はない。(NTT東西に)競争相手として挑むことで、お客様に利益が還元されていった」と競争の重要性を語った。
自由化に伴い、1999年にNTT東西とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)に分割。2001年には通信事業者を事前選択できる「マイライン」制度が導入された。さらに2003年にはNTTが利用していないドライカッパと呼ばれる回線接続料の大幅な見直しにより、各社が直収電話サービスを開始した。
しかし、固定電話のトラフィックのピークは1997年で、1997年以降は下がっている。特にマイラインの導入時期は、固定電話から携帯電話などの移動電話にトラフィック移行が始まった時期となる。さらにインターネットが普及し、ダイヤルアップ接続で市内接続でアクセスする時代からADSLの常時接続へ、電話からメールへとトラフィックが移行し始めた。
古賀氏は、「市場はインターネットに関心が移っている。市内、市外通話、市場はシュリンクしていく。今後は光回線(FTTH)の時代」と話す。ここでもまたさらなる問題があるとKDDIは語る。
NTT東西は、「フレッツ・光」と「ひかり電話」をセットで提供し、アナログ電話(メタル回線)から光回線へと電話ユーザーを乗せ替える戦略に出ているが、光回線でもNTT東西が79%の設備シェアを保持しており、設備とサービス競争の両面で優位だというのが理由だ。
ドライカッパの解放により、メタル回線を利用できるADSLは競争事業者も参入しやすかったが、FTTHを各家庭に導入するには、光回線を引き直さなければならない。
「日本全国に通信設備のインフラの基盤を持っているNTTとわれわれの体力、実力値はだいたい8対2」(古賀氏)という。
自前の回線も引いているが、メタル回線の敷設の際に手続きや空き領域を確保して光ファイバを容易に設置できるNTT東西に対し、競争事業はゼロからの敷設。光回線のインフラを日本全国に引いていくのは現実的ではないと話す。「携帯電話は数万局でカバーしているが、ビジネスとして投資して回収できる。しかし、5000万以上の世帯にFTTHを引っ張っていくための投資は何十兆円になる。それを固定のサービスで回収するのは無理」(古賀氏)。
実際にKDDIは、NTTが利用していないダークファイバを借りて「ひかりoneホーム ギガ得プラン」を北海道で開始しているが、これも赤字だという。
KDDIが求めるのは、NTTのダークファイバのオープン化だ。
「これから花開くだろう領域に、下(インフラ)の独占的な力を利用して上(サービス)まで支配していくのではないかということを懸念している。NTTの組織論を論じるつもりはないが、NTTの独占が進むのはお客様のためにならないのではないか。これまでの25年の歴史を振り返って、このまま競争しなくていいんですか、と言いたい。競争をどうしますか、というのが一番問いかけたいこと」と話し、議論を呼びかけた。
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