カリフォルニア州マウンテンビュー発--書籍検索に関するGoogleと出版社の和解を攻撃しているすべての組織が、関連法の改善を求めて議会へのロビー活動に同じだけの時間を費やせば、論争は消えてなくなるだろう。「Google Book Search」のチーフエンジニアは米国時間7月30日夜、このような考えを示唆した。
Googleと出版社の和解について恐れることは何もないと世界に納得させるべく、同社の関係者が米国時間7月30日、コンピュータ歴史博物館(Computer History Museum)にやってきた。ここで、Google Book Search担当エンジニアリングディレクターであるDan Clancy氏は、同博物館のプレジデント兼最高経営責任者(CEO)であるJohn Hollar氏に質問状を提出した数百人の出席者を前に、和解を擁護した。Googleは2008年、出版社が起こした訴訟で和解に達した。その和解で、Googleは著作権保護期間内ではあるが絶版になった書籍について、そうした作品の権利保有者の所在が不明で許可を得られない場合でも、同社がスキャンする権利を有するという合意を得た。和解から離脱して、Googleによる著作物のスキャンを禁止したい権利保有者は、9月までにその旨を申し出る必要がある。和解はまだ最終的なものではなく、和解を承認するための最後の聴聞会が10月に予定されている。
著作権保護期間内ではあるものの絶版となっている書籍の検索や閲覧、そして、最終的にはインターネット上での購入が可能になれば、そうした書籍の寿命が延びるため、大半の権利保有者にはGoogleと協力する十分な理由があるとClancy氏は主張した。書籍出版社は、需要の低い書籍を出版することに関心を失っている。しかし、インターネットならば、極めて安いコストで書籍を流通させることが可能だ。
問題なのは、Googleの和解によって、同社がいわゆる「孤児作品」をスキャンして出版する法的権限を持つ、米国内で唯一の組織になることだ。孤児作品とは、著作権保護期間内にあるものの、権利保有者の所在が不明な書籍のことである。Googleが包括的に書籍のスキャンを始めたとき、同社は訴えられた。そして、これには、孤児作品をスキャンしてGoogleのサービスに対抗しようとする者は皆、同様の自由を得るために同じような法的手順を踏むことを余儀なくされるという考えがある。
Internet Archiveは、Google Book Searchをめぐる和解を公然と批判している団体の1つだ。Internet Archiveは、30日のイベントに先立って、次のような内容の声明文を配布した。「Googleと同様の法的保護を持つ者は誰もいない。和解の当事者たちは、孤児作品をデジタル化するあらゆる者に法的責任の保障を拡大できるように、和解合意を修正するのだろうか。それができないのなら、なぜ連邦地方裁判所で当事者だけの取り決めをする代わりに、孤児作品を和解の対象から排除して、法的な解決策を強要しないのだろうか」(同声明文)
現在の合意の下、Books Rights Registryは、書籍のデジタル化を考える企業や組織と契約することを許されるが、孤児作品についてはGoogleが享受しているほどの権利を与えられていない。Clancy氏は、著作権で保護されているものの絶版になった本は書籍全体の10%にものぼると推測する。
こうした理由から、書籍のデジタル化に関係するすべての人にとって、孤児作品の問題を法律で解決するのが最善と考えられている。Googleも、こうした法律の可決を目指して、議会に働きかけていると、Clancy氏は述べる。著作権法の複雑さに加えて、議会では他に差し迫った問題があり、議会の支持をとりつけるのに苦戦していると、同氏は述べた。
Googleは孤児作品をデジタル化する権利を得ることにより、書籍をデジタルスキャンする需要が刺激され、ゆくゆくは議会の行動を促すことになると考えている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ
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