結局のところ、デジタルダウンロードによってアルバムの息の根が止められることにはならなかったようだ。
伝えられるところによると、4大レーベルとAppleには、次世代アルバムを作り上げる計画があるという。この取り組みの原動力となっているのは、音楽から、99セントのダウンロードによる貧相な利幅ではなく、大きな利益が再びもたらされるかもしれないという希望だ。
Financial Timesは米国時間7月26日夜、Appleが音楽パッケージに「写真、歌詞シート、ライナーノート」を付けて消費者が購入するように仕向け、「クリックしてAppleの『iTunes』ソフトウェアに戻ることなく、インタラクティブブックから直接曲を再生できる」ようにすることを計画していると報じている。
音楽業界の情報筋が筆者に語ったところでは、4大レーベルは、独自のインタラクティブアルバム形式を作成しており、Amazonやほかの音楽サービスに提供しようとしているという。Appleと4大レーベルは、それぞれのアルバム形式を2009年秋に発表することにしている。
批評家たちは間違いなく、そんな計画は愚かだと言うだろう。デジタルテクノロジによって、音楽を購入する人々がCDをバラバラにして欲しい曲だけを手に入れることができるようになってから、ほぼ10年になる。音楽ファンがあまりに長い間、12ほどの曲を、そのうち出来のいい曲は2曲しかないかもしれないのに、15ドル程度で購入せざるを得なかったということは、音楽業界の幹部でさえ認めている。
次世代アルバムがどんなものであろうと、音楽ファンが高い値段を払って欲しくない曲を購入するように仕向ける手段にはなり得ない。
しかし、音楽業界の苦しい状況は、2009年になって、Universal Music Groupデジタル部門のビジネス開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるDavid Ring氏によって率直に述べられた。
Ring氏はEconMusic Conferenceの参加者に対し、「われわれがやろうとしていることが1曲ごとのダウンロードなら、それは成長が可能なビジネスではない。それは業界にとって健全なことではないだろう」と語った。
これは、1曲ごとの販売では利益が少なすぎるということを意味している。不振の音楽業界は、人々に音楽を提供し、それに何か魅力的なものを追加して、もっとお金を使ってもらう手段を探しているようだ。
EMI Groupは7月に、45回転シングルレコードの60周年を記念して、「Digital 45」の販売を始めた。45回転レコードは当時の標準的なアルバムよりもサイズが小さく、通常はA面とB面に1曲ずつ、2曲が入っていた。EMIは、ダウンロード形式でも同様の効果を作り出そうと、ヒットシングルにB面をバンドルすることを始めた。
利幅を大きくするということについては、レーベル各社はすでにある程度の成功を収めている。
iTunesのメーカーであるAppleは1月、レコード業界に対し、従来の1曲当たり99セント以外の価格をつけることを容認すると発表し、それまでになかった動きを見せた。
おそらくAppleと4大レーベルは、人々が価値のあるものと思うようなコンテンツの組み合わせを考え出すことができるだろう。しかし、ここで危険なことは、消費者にパッケージを押しつけようとして、今よりももっと消費者を遠ざけてしまうことがあり得るということだ。そうなれば、消費者は新たな違法コピーの海に船出するかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。原文へ
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