この元IBM幹部の話では、AppleはIBM製シリコンに割増金を支払っており、ジレンマに陥っていたという。IBMはIntelほど規模の経済性がなかったため、請求額を高くする必要があった。しかしAppleは、PowerPCアーキテクチャが証明したように、本質的に優れたRISC設計からもっと得るものがあったと考えていたとしても、より多くの金額を支払いたくはなかった。
Jobs氏が2003年に語った内容を紹介しよう。同氏は声明の中で次のように述べていた。「PowerPC G5はこれまでのルールを塗り替える。この64ビットのレーシングカーは、世界最速のデスクトップコンピュータであるわれわれの新しいPower Mac G5の心臓部に搭載されている。IBMは世界で最も進んだプロセッサデザインと製造のノウハウを提供しており、これは今後長く続く、実り多い関係のほんの始まりにすぎない」(AppleがIntelに切り替えた後、Jobs氏がIntelについて語ったことと非常に似ている)。
元IBM幹部によれば、Appleは2003年にはIBMの技術を絶賛していたにもかかわらず、2005年までにはコストの面で競争力がないと考えるようになったという。
この人物は、IBMにとって、Appleとのビジネスは、資金ばかり食いつぶして利益が出ないものだったと語る。その理由は、チップセット、コンパイラ、その他のサポート技術に多額の投資を必要とするにもかかわらず、PCプロセッサ市場全体でわずかなシェアしか得られないからだとしている。このため、結局利益を上げることは不可能だった。
なぜプロセッサ市場でわずかなシェアしか獲得できなかったのだろうか。Appleは(IBMとMotorolaの)ダブルソーシングを強く要求していた。このため、初めからIBMには、市場の約半分を獲得できる可能性しか残されていなかった。この元IBM幹部は、これが非常に大きな経済的負担だったと言う。言い換えれば、Intelは単独でこの市場の最大のシェアを持つ企業だったということだ。IBMとMotorolaの2社は、それぞれに巨額の投資を行いつつ、Intelに比べてずっと小さい市場シェアを分け合わなければならなかった。そしてこの人物によれば、Appleは2社を争わせて漁夫の利を得たのだという。
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