“群衆の叡智”をテーマに、企業の開発者や研究者などが集って討論を行うイベント「群衆の叡智サミット(WOSC)2009」が5月26日に開催された。
今回で3回目の開催となる同イベント。テーマとして掲げられる“群衆の叡智”とは、ジェームズ・スロウィッキー著の「『みんなの意見』は案外正しい」で述べられている“Wisdom of Crowds(WOC)”という概念によるもので、権威者による少数意見よりも、群集の多数の意見や情報のほうが正しい結論や予測になることが多いといった考えだ。
サミットの主催者であるテックスタイル代表取締役の岡田良太郎氏は「前回までのサミットでは、群衆の叡智とはそもそも何なのかといったことに始まり、それが正しいかどうかを議論した。3回目となる今回は、群衆の叡智を理解しているという前提で、それがどのように変化してきているのかといったことや、これからの可能性について議論していきたい」と冒頭でイベント開催の主旨を語った。
続いて行われたパネルディスカッションでは、「『群衆』における情報の流れの変化--供給過多時代における情報、利用技術にまつわる変化」と題して、6名のパネリストが意見を交換した。昨今社会の中で起きている事象を取り上げながら、各自が分析や感想をぶつけ合った。
まずはじめに取り上げられたテーマは、2008年の米国大統領選挙。今回の選挙では、群集をうまく動かし勝利したと評されているオバマ大統領。オバマ氏は選挙にあたり、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)をはじめとして、あらゆるメディアを使い民衆の支持を集めたといわれている。
ITジャーナリストの佐々木俊尚氏は「今回の大統領選で決定的に新しかったのは、ネットで献金を集めるシステムを開発したこと。企業がやるのではなく、政治家側が動いたというのが意義が大きい。オバマ氏は今回の大統領選でSNSで600万ドルの献金を集めたが、それをもとに米国三大ネットワークのプライムタイムでコマーシャルを流し、ネットとリアルをうまく融合した」と、オバマ氏の戦略を評した。
また、アジャイルメディア・ネットワーク取締役の徳力基彦氏は「前々回の選挙まではネット戦略はブログどまりだった。それがオバマ氏のようにネットを使って献金からボランティアの招集まで個人をうまく組織した結果、投票率までつなげたというのは米国政治史上初のこと。集団のパワーを最大化することによって群集の叡智をも変えられてしまうというのが興味深かった」と振り返った。
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