一方、ブログやソーシャルネットワークなど個人メディアが台頭し、情報過多な状態に陥っている昨今。この変化について佐々木氏は「現在はミドルメディアの巨大化が起きている」と分析。さらに「ミドルメディアと呼ばれる専門紙的な情報はこれまでもニーズは高かったが、紙で発行していた時代はコスト的に成り立たなかった。それがインターネットで大爆発し、情報が大洪水化した。これからはそれらを個々人に適切な情報としてどうやって集約していくか。レコメンデーションのモデルをつくっていかなければならない」と現状の分析と今後の課題を語った。
また、レコメンデーションのあり方について、佐々木氏は「点数による評価は、母集団が違えば結果は異なる。『誰が評価しているか』が重要で、単純な数の論理ではなく趣味や思考が同じ人が評価した結果のほうが求めるものに近い」と提起した。これに対し、ほかのパネリストからは「コンテキストを読み取るという人間の優れた能力を代替する解決策は既存のテクノロジーにはまだない。しかし、対応できる何かがあるはずで、情報の集約はコンテンツに比重が置かれたこれまでのやり方からコンテキストベースになっていくだろう」(LUNNAR CEOの高須賀宣氏)、「技術よりいまや人間の側がその使い方を身に付けて対応していかなければならない時代に来ていて、それに追い付いていないことが問題の根源にあるのではないか」(駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授の山口浩氏)といった意見が述べられた。
また、オープンソースに代表される群集の行動の集約によって生み出されるものの最新の事例として、NTTデータの三浦広志氏が「OpenStreetMap(OSM)」を紹介した。OSMは、法的・技術的に自由に使うことができないことが多い地図情報について、GPSを利用してユーザーが地図情報を投稿し、フリーの地図を作成していくプロジェクト。山口氏によると、現在、全世界に11万5000人のユーザーが参加しているが、日本においては参加者の絶対数が少ないことやビジネスとして成立しにくいといった点を挙げ、「コントリビューターとして参加することの楽しさをどう伝えていくか」と課題が述べられた。
また、ほかのパネリストからは「いまや群集の間でいろんなデータが出てきている。そういったデータを集めると『おもしろい』と分かり、ビジネスの可能性が生まれる。しかしそれがオープンなアプローチになった途端、日本は弱い。日本は使ってくれる人がいない」(徳力氏)、「オープンソースにしてみても、参加しない人は自分は利用する側という意識しかなく、求めるだけだから完全なものを求める」(山口氏)といった、群集の叡智における日本人の意識や心理の分析がなされた。
このほか第2部では、「『群集』による変革のポテンシャル-新しい価値の発見と創出の実際と将来の可能性」と題したパネルディスカッションが続けられた。企業の経営戦略や事業戦略への適用をはじめ、“群集の叡智”をいかにしてイノベーションにつなげていくかについて討論がなされた。
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