「オーストラリア・クイーンズランド州観光公社 『世界最高の仕事』」のストーリー

 ウェブにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。オーストラリア・クイーンズランド州観光公社が実施した「世界最高の仕事(The Best Job in the world)」キャンペーンは、人間の感情を刺激するストーリーがありました。

 このキャンペーンは、グレートバリアリーフに位置するハミルトン島で、住み込みの管理人を募集するというもの。「南の島で半年暮らして報酬をもらえる『世界最高の仕事』に就きませんか?」というのがキャッチフレーズでした。

 仕事の内容は、PRブログの更新、魚の餌やり、郵便物の回収、といった程度で、残りの時間はシュノーケルやダイビングを楽しみながら、半年間プール付き豪邸で気ままに暮らせばいいというもの。そして気になる報酬は、15万オースラリアドル(現在のレートで約1100万円)です。

 求人の告知には、YouTubeやTwitterなどが使用され、オンラインビデオで投稿する仕組みになっていました。この募集は告知と同時にネット上で大きな話題となり、世界各国から3万4684人もの応募が殺到したのです。

 では、何が多くの人の心を引きつけたのでしょうか?それは、一般視聴者が誰でもこの企画に参加できるストーリーを作っていることです。島の管理人になるのに、特別な能力は必要ありません。ひょっとしたら、自分でもできるかも、と誰もが思うことができます。

 南の島で暮らせて高給がもらえる仕事という、誰もが憧れるわかりやすいイメージは、多くの人の感情を揺さぶりました。またネットで投稿や投票の仕組みも、インタラクティブ性があり参加意識を高めました。そして何よりも、「世界最高の仕事」というキャッチーなネーミングが秀逸でした。

 応募書の中から50人の候補者に絞られ、さらにインターネット投票と主催者側によって選ばれた16人が、実際にハミルトン島に招待され、泳ぎやシュノーケルの技術を披露するというオーディションを受けたのです。

 ハミルトン島での最終選考の様子は、世界中のマスコミの注目を集めました。大勢の報道陣がつめかけ、大きく報道されたのです。日本人も最終選考のひとりに残っていたので、ニュースなどで取り上げられていたのを観た方もいらっしゃると思います。

 こうしてハミルトン島の名前と、島の美しさは世界中に配信されました。例えば同じ効果を得るような広告を世界中で展開しようとしたら、何百億円あっても足りないかもしれません。クイーンズランド観光公社の目的は十二分に達せられたのです。

 このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のウェブコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタプロフィール
 川上徹也(かわかみてつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に「仕事はストーリーで動かそう」(クロスメディア・ パブリッシング)。

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