ウェブにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。
Knicker Pickerというイギリスの女性下着通販サイトには、アクセスした人間が思わず参加したいと思うストーリーがありました。
まず、下着を選びます。これはショーツ、ブラ、スイムウェア等、いくつかのカテゴリーの中から、数十種類が選べます。そしてそれを着せる女性モデルを選ぶのです。女性モデルは、体のサイズの大きさを変え、5名います。(ある特定の下着はNGというモデルもいます)
モデルを選ぶと、画面右外から、その下着を着た女性が歩いてきて、正面に向かってまっすぐに立ってくれます。
その時、Turn Aroundと、Come Closerという表示が現れます。Turn Aroundを押すと、モデルはその場でまわれ右をして、後ろ姿を見ることができます。
一方、Come Closerを押すと、こちらに歩いてきて、下着の詳細を見ることができるようになっています。
そこでも、Turn AroundとWalk Backの表示がでます。Turn Aroundはその場でまわれ右。Walk Backは、ターンして、元の場所に歩いて戻っていくという訳です。
画面右には常にその下着のメーカー、スペック、値段等が表示されています。気に入れば、Buy Hereのボタンを押して、そこから買うことができるという仕組みです。
実際にサイトで試してみるとわかりますが、ついつい色々なモデルに色々な下着を着せて遊び続けてしまいます。日本にも、洋服を試着できるサイトは色々とありますが、ここまで楽しいものはありません。
では、何が違うのでしょう?それは、サイトを見ている人間が参加できるストーリーを作っているからです。Turn Around、Come Closer、Walk Back、どれも単純な動作だけど、自分が参加しているという感覚が味わえるのです。いわば、モデルに「ちょっと後ろ向いてみて」「じゃあこっちに近づいてきて」なんて、声をかけている感じに近いものがあります。
女性下着の通販サイトですから、基本は、女性が自分の下着を買う時の参考にする為に作られている訳ですが、今回紹介したサイトは、実は「男性が女性に下着をプレゼントする時に利用してもらう」という裏コンセプトがあったといいます。
このサイトは評判を呼び、アクセス数も、売り上げも飛躍的に伸びました。もし同じモデルを使って、同じ下着を身につけていたとしても、ただ写真があるだけでは、このような話題になることはまずなかった筈です。
このサイトが秀逸なのは、見ている人間が主人公になれるストーリーを組み立てたという点。これこそがまさにインタラクティブなコミュニケーションなのです。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のウェブコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
◇ライタプロフィール
川上徹也(かわかみてつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に「仕事はストーリーで動かそう」(クロスメディア・ パブリッシング)。
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