日本版フェアユース検討に向け、2009年度の法制問題小委員会が始動 - (page 2)

 これに対し、委員からは「フェアユースのイメージが漠然としたままヒアリングをすると、話が噛み合わなくなってしまう可能性があるのではないか。ある程度要点を整理した上でヒアリングを行うべき」(東京大学大学院教授の森田宏樹氏)と意見を提案。一方、文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長の川瀬真氏は「政府の知財本部やこれまでの議論の中間報告書で関係団体などからある程度提言が出されている。とりあえずそれで整理されているので、これをもとに意見聴取を行いたい」と、方針を貫く姿勢を崩さなかった。

 フェアユース規定に対しては、すでに権利者側からは慎重論の声が高まっている。特に先ごろの米Googleの書籍全文検索に対する訴訟の和解案をめぐり、日本の権利者は米国のフェアユース規定による拡大解釈により甚大な被害を被ったと考える向きがあるからだ。

 その後に行われた意見交換では、「権利制限だけでなく、著作権法体系全体の基礎となる課題。十分に時間を尽くした議論を」「日本と米国では法文化や慣習が違う。日本の国民性にのっとった独自のフェアユース規定を模索するべき」「一般規定だけでなく、個別規定の整理と合わせてトータルで考えていくべき」といった慎重的な声が聞かれた。一方で、「米国の裁判では競争法(独占禁止法)では著作権法の事例がほとんどない。これはフェアユースが一定の歯止めになっていると言えるのではないか」という前向きな意見も挙がった。

 なお、今回の会合では、前期に引き続き同委員会の下に2つのワーキンググループ(WG)を設置することが了承された。複数者によるネット上の創作についての課題を議論する「契約・利用WG」、および第三者によって間接的に著作権が侵害される行為である“間接侵害”を論じる「司法救済WG」が開催される。

法制問題小委員会の会場の様子 法制問題小委員会の会場の様子

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