GoogleはGoogleブック検索で得た対価の63%を著者や出版社に支払う。また、すでにGoogleがスキャンした書籍については、1作品あたり60ドルを払うという。これらのお金を権利者に分配するのが版権レジストリだ。分配にあたって版権レジストリは一定の手数料を徴収する。
なお、版権レジストリをめぐっては、Googleとの契約が独占禁止法違反にあたるのではないかとして、米国の消費者団体が異議を申し立てている。版権レジストリはGoogle以外の事業者にも管理データの利用を認めるが、Googleより良い条件では提供しない。この「最恵国待遇」は、後発の参入事業者にとって不利になると消費者団体は問題視している。
権利者にあたる作家や出版社は、今後どういう対応をとるべきなのだろうか。福井氏は選択肢として、以下の3つを挙げる。
和解から離脱したり、異議を述べたりする場合は、所定の作業が必要となる。まず和解離脱は「Googleブック検索和解」というサイトから手続きが可能。異議申し立てはニューヨーク南地区 地方裁判所に声明書を送る必要がある。ただし、異議を述べても裁判所から却下される場合もある。
和解から離脱した場合は、裁判が起きる前と同じ状態になり、書籍がスキャンされていたとしても60ドルは受け取れない。また、Googleを相手取って個別に裁判を起こすことはできる。ただし、「一般論だが、米国で裁判をきちんとやろうとすると1000万円はかかる。今回のケースは、その額ではきかないだろう」と福井氏は話す。また、Googleが書籍のスキャンをフェアユースの範囲内と考えていれば、引き続きスキャンされる可能性も否定はできないとのことだ。
和解に残留した場合でも、書籍データの販売や抜粋表示などの許諾は個別に指定できる。また、Googleブック検索のデータから自分の書籍のデータを削除するよう求めることもできる。削除手続きの期限は2011年4月5日だ。
福井氏は「自分がどうしたいかが問われている。『そんな筋合いはない』という人もいるが、現在問われているのは事実だ」と話し、まずは権利者が自分の作品をどう扱って欲しいかを考え、表明する必要があるとした。
ただ、その前提として、誰が書籍の著作権を持つのか、という点を確認する必要がある。米国と異なり、日本では書籍の出版時にデジタル著作権までを契約書に明記するケースは極めて少ない。作家が著作権を持つことに異論は少ないだろうが、出版社が著作権を持つかどうかという点は、議論が必要だと福井氏は指摘する。
「例えばある出版社が新刊を出したとする。それをスキャンして、1週間後に別の出版社にオンライン配信させたたら、出版社はみんな怒るだろう。だとすると、何か出版社の権利のようなものがあるかもしれない」(福井氏)。このGoogleブック検索の問題を機に、出版社と作者がお互いの関係や契約について議論すべきだというのが福井氏の主張だ。
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