「作家と出版社の牧歌的な時代は終わった。今までは良い時代だったが、これからは契約ということを意識せざるを得ないだろう。『私はこうでないとビジネスできない、投資する甲斐がない』という本音をぶつけあうべきで、そこからほんとうの信頼関係できるといい」(福井氏)
「悪い言い方だが、(今回の和解は)他国状況に配慮していない。欧米の多くは幅広い権利について著者と契約書を交わしており、割り切った判断がしやすい。しかし日本では誰に何の権利があるかをあまりはっきりさせない共有関係を取ってきた。このこと自体が、Googleという『黒船』に照らされた問題の本質だ」(福井氏)
作家にとっても悪いことばかりではない。作家で編集者の仲俣暁生氏は、「日本語で小説評論を書いている身としては、海外の人が参考文献で自分の書籍を載せてくれているというのが検索によって分かるのが面白いし、その本を読んでみたくなる。Googleブック検索は、情報の共有という意味ではメリットがあるとも感じる」と語る。
「日本ではこれまで、出版社がエージェントとしての機能も果たしていた。儲かっていた時期はよかったが、ビジネスとして落ち目になってくると出版社と著者の利害が対立する。そういう意味で、現場の編集者は難しい時期に来ている。商慣習を変えていく上でも、いい意味で色んなことを考える時期なのかなと思う」(仲俣氏)
また、今回の和解は、デジタル書籍配信ビジネスが今後成功するかの試金石にもなっていると福井氏は見る。Googleブック検索により、数百万冊を取りそろえた、いわばデジタル書店が登場することになる。これがビジネスモデルとして米国で成功すれば、「iTunesの時の同じように、いやがおうでも世界中に広がる。日本にフェアユースやクラスアクションの規定がなくても、成功したモデルがあれば正面から乗り込んできて、『データ配信の許諾をもらえますか?』と上陸してくる(各出版社に話に来る)かもしれない。それは脅威だ」(福井氏)
米国でGoogleブック検索のビジネスモデルが成り立てば、その実績を元に日本でもGoogleがサービスを展開し、市場を席巻する可能性がある。それに備えるためにも、「今後数年間で(出版社と著者の)関係を整理したらいいのでは」と福井氏はアドバイスしていた。
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