まずPCですが、今年夏からはインテルの標準モジュールを搭載したノートPCが出てきます。また、従来のPCに接続して使える端末も既にありますから、この市場は2009年中にはそれなりに確立できると思います。そして2010年はPCライクなもの、MIDなどが登場し、その年のうちには花盛りになるでしょう。
組み込み系のほうはもう少し時間がかかると思います。なぜなら、いままではネットにつながっていないか、低速のネットワークを利用していた分野ですので、高速のネットワークを使ったアプリケーションを開発する期間が必要だからです。また、この分野ではそれなりに広いサービスエリアが求められると思いますので、その意味でもPC系よりは後になります。時期としては、2010年中に初期の製品が登場し、それが花開くのが2011年だと思っています。
今はまだそういう製品が存在しないのでうまく説明しにくいのですが…。例えば、現在の音楽プレーヤーは内蔵メモリの中に音楽ファイルを入れているわけですが、はたしてそこに入れておく必要はあるのでしょうか。PCではリモートデスクトップなどの仕組みを使って、アプリケーションやファイルの実体は別の場所にあるにもかかわらず、手元の端末で作業をするといったことが可能になってきました。これの何がメリットかというと、手元の端末が変わっても、やれることは変わらないので、端末の違いを意識しなくてもよくなるのです。
そうすると、端末はどんどん持ち運び安い形になっていく。今は、元の音楽ファイルは自宅のPCの中にあって、それを都度メディアプレーヤーに移さなくてはいけませんが、ネットワークが速くなれば、そんな操作は不要になります。家で映画を見るときは大きい画面で見て、外にいるときはポータブルプレーヤーで再生する。ファイルを移す必要はなく、機器は違うけどやれることは一緒――そういう時代が来ると思います。
また、今は写真を撮った後、家に帰ってデータをメモリーカードからPCに移して、それからブログにアップロードしたりしていますが、カメラが直接ネットワークにつながれば、どこに画像が入っているということを意識しなくてもよくなります。カーナビは今でもおすすめのお店などが地図の上に表示されますが、古い情報のために、もうお店がなくなっていることもあります。ネットにつながっていれば、常に最新の情報が表示され、渋滞情報もリアルタイムに更新されますし、今まさに流行しているお店が表示されます。
昔は紙の大きな辞書を使っていたのが、最近はみんな電子辞書になりましたよね。さらに、ネットワークが使える環境ではウェブを検索して調べるようになっています。辞書を引くという行為は変わっていないのに、ずいぶん世界が変わってきているんです。WiMAXという太いパイプができたことで、そういう世界ができるようになります。
我々の場合は「僕らは回線を提供いたしますから、インターネットの上でいろいろな人が勝手にサーバを立てて勝手にサービスを始めたように、あとは皆さん好き勝手やってください」という考え方です。「キャリアが何を次にやるか」が注目される世界とは違います。
「土管になりたい」と自分から言うのも変な話ですが、自分だけでやれる世界というのは限られるんですね。「日本の携帯電話市場はガラパゴスだ」という話がありますが、自分で全部やろうとすると、日本の事業者だから日本のことしか考えないわけです。
そして、自分の端末を売ろうとするから、家電量販店に自分のキャリアの売り場を作ろうとする。ところが、その売り場というのは、何フロアもある量販店の中で、せいぜい10畳とかそれくらいのスペースなんですね。僕らがやりたいのは、量販店のすべてのフロアにある商品が、僕らのネットワークでつながるような世界を作るということなんです――もちろん、何のために冷蔵庫にWiMAXを入れるのかという議論はありますけどね(笑)。
それからもう1つ、今後出てくる情報端末やネットワークカメラといった新しい商品が、世界で売れるようにしていきたい。そうすると、世界中でいろんな種類のWiMAX対応デバイスが出てくる。そういう新しい世界を作れるのなら「土管でもいいかな」と思うことはあります。
では、なぜ完全に土管に徹するのではなく、自社でもユーザーに直接サービスを提供するのかということですが、誰かが最初にやらないと市場が立ち上がらないからです。だから最初は自社で端末も売ります。ただ、この夏以降は店頭で売られるような、端末ベンダーの通信カードが出てきます。例えば、USBメモリはどのメーカー製のものでも同じように使えて、売り場ではいろんなメーカーの商品が売られていますよね。中にはアニメのキャラクターが付いているようなものも出ている。標準だからどれでも使えるけど、ユーザーそれぞれの嗜好に合ったものがいろいろある。WiMAXもそういう世界になります。
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