サンフランシスコ発--「Atari 2600」から任天堂「Wii」まで、ビデオゲームの進化を表す真線を引くとしたら、1つはっきりしていることがある。過去を知らなければ未来は知りえないということだ。
これは、サンフランシスコで開催のGame Developers Conference(GDC)において米国時間3月27日に行われた、ジョージア工科大学教授のIan Bogost氏による講演「Learning from the Atari 2600(Atari 2600から学ぶ)」の中心となる考えだ。Bogost氏の主張は基本的に、「分かりきったことをやり直す」必要はないということだ。つまり、過去における発見は、あまりに不可解なものとして放棄する代わりに、未来に適応するが一番良いこともある、というものだった。
Bogost氏は最近、マサチューセッツ工科大学助教授Nick Monfort氏と共著で「Racing the Beam」を出版した。一般的には「Atari 2600」として知られる象徴的な「Atari VCS」についての本だ。したがって、27日のBogost氏の講演は明らかに、このプロジェクトのための研究から来ているものだ。この1970年代のビデオゲームコンソールに対してBogost氏が愛着を持っていることは明らかだが、同氏が真に主張しようとしていたのは、成功するゲーム、特に多くの多様な人々に楽しまれるようなゲームの礎は、先進かつ卓越したテクノロジにはほとんど関係しておらず、楽しめる共有体験を生み出す仕組みにより深く関係しているということだ。
Bogost氏の主張によれば、Atariの共同創設者Nolan Bushnell氏が過去に遊園地の客引きをしていた際、後のAtari 2600につながる3つの体験があったという。家族全員で楽しめるゲームコーナーのにぎわい、酒場で皆で競い合うダーツの共有体験、個室でテレビの周りに集まって過ごす家族時間の意義だ。同時にBushnell氏は、「Pong」のようなコイン式のアーケードゲーム機で手にした成功を、家庭用ゲーム機で繰り返したいと考えていた。
Bushnell氏が追い求めたものは、任天堂が同社のWiiに組み込もうとしてきたものでもある。それは、人々が一緒に何かをやることで楽しむことができる感覚だ。映画を見に行ったり、友人とバーに出かけたりするのはとても楽しいものだ。競い合っていようとなかろうと、人々が社会的な場で一緒にできることだからだ。
それは背景状況に関するものだとBogost氏は言う。家で飲むことはできるがバーで飲むほど楽しくない。家でやるプール(ポケットビリヤード)は、地元のバーで友人とやるのとは同じではない。また、実際に外に出ることを再現できるビデオゲームシステムはないが、ゲームの仕組みとツールを適切に組み合わせることで、人々は居間にいたとしてもソーシャルシーンの中心にいるかのように感じることができる。
Bogost氏は「だからこそ、『Wii Sports』コレクションの中で『Wii BOWLING』が最高のゲームなのだ。これは、体験と背景状況を実にうまく再現している」と述べる。
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