2009年のカンヌ国際広告祭ではコンペティションのラインナップとして、PR部門が新たに創設されます。PR部門の立上げは、他の新設カテゴリーと同様に長い間検討範囲に入っていたそうですが、ついに「その時が来た」と審査委員長のPhilip Thomas氏は述べています。これは何を意味するのでしょうか?
インターネットの登場によって、情報量は一気に肥大し、生活者自らが発信するCGMが生まれました。広告は、インタラクティブ性によってユーザーに体験を提供できるようになったことでコンテンツ化し、さらにエンターテインメント化しました。
一方、生活者は情報に対して賢くなり、広告・キャンペーンは届きづらいだけでなく、コンテンツ化した広告は、それ自体を広告する必要すら出てきました。そんな中、広告(有料の媒体を用いて商品の宣伝をすること)とPRの関係は変化し、広告とCGMは新たな関係を結び始めています。
そのひとつの側面が、このPR部門の創設や昨今の「戦略的PR」重視の姿勢に見て取れるのではないでしょうか。
カンヌ広告祭といえば、2008年に「UNIQLOCK」がサイバーライオンとチタニウムライオンのグランプリをW受賞し、日本の広告界がにわかに沸いたことは記憶に新しいと思います。チタニウムライオンは特に、カテゴリーを超え未来を指し示す広告を評価するための賞と言われており、その年のカンヌ広告祭を象徴する賞として注目されます。
「UNIQLOCK」では、「ブログのメディア特性を熟知した上で、そこに見合う表現を緻密に計算して作り上げられた”新しい広告”」(「広告批評」328号)としてその斬新さ、技術力とクリエイティブ力が高く評価されました。
また、日本においては継続的なPR活動の成功も注目されています。
参考記事:「UNIQLOCK」がロングヒットを続ける理由とは(後編)
さて、今までこの連載では「海外の最新事例を斬る」ということで、先進的な海外事例やトピックを扱ってきましたが、先進事例は何も海外ばかりとは限りません。確かに、新しいビジネスの創造や、新しい広告手法/ソリューションなどは欧米発が多く、進んでいる感は否めません。しかし、実際の応用の場面においては日本も引けを取ってはいません。
PRやCGMの活用という視点で見れば、「UNIQLOCK」をはじめ、緻密に情報の広がりを設計している事例がいくつも生まれています。そこで、今回はあえて日本の優れたインテグレーテッドキャンペーンを例に挙げ、情報の広がりという視点から見ていきたいと思います。
2008年夏に実施されたNHN JAPAN携帯電話向けゲーム&コミュニティサイト「ハンゲ.jp」の「人生の半分は、ゲームだ。」キャンペーンは、緻密に情報の広がりが練られていた事例です(GT INC.伊藤直樹氏によるプランニング)。簡易的なキャンペーン構造は図参照のこと。
まず、このキャンペーンには「ハンゲーム」という名称から連想される「人生の半(ハン)分は、ゲームだ。」というキャンペーンタイトルと、自分の顔の半分が別のものに置き換わるというエンターテインメント性を兼ね備えた携帯コンテンツ、「半分」というクリエイティブの画期的な面白さが大前提にあります。
その上で、「ハンゲ.jp」は携帯電話向けサービスであるため、携帯電話を基点としたクチコミを起こす仕掛けが用意されていました。
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