コアになる仕掛けとして、携帯電話で自分の顔写真を送ると、今日の診断結果として「アナタの半分は、○○です」という診断結果と共に、その○○と合成された顔写真が届けられる「ハン顔」というモバイルコンテンツが用意されました。自分の顔が意外な画像(白菜や野球ボール、赤ちゃんのお尻など)になって戻ってくるため、その写真を人に「見せたくなる、伝えたくなる」クチコミ心理を巧みに刺激しています。告知手法としては、電車内のステッカー広告が積極的に活用されました。
もうひとつの拡散させる仕掛けが、ゲリラ広告を利用した携帯電話のカメラ機能、いわゆる「写メ」によるクチコミの誘発です。街中に片側半分が「フィギュア」の「ハン人形」を設置したり、左右全く違う衣装に身を包んだ「ハンゲリラ」が街を練り歩いたりすることで、「珍しいもの、奇妙なものを撮ってすぐ伝えたい」心理をくすぐりました。
渋谷に設置された「ハン人形」は『シブヤ経済新聞』に写真つきで掲載され、その記事がYahoo!ニュースに転載されました。パブリシティ面でも、ウェブメディアへの波及という形で認知を大きく広めたと考えられます。
実際このキャンペーンは、携帯電話のメールを介して広がったと考えられますが、その情報拡散の一端をインターネット上に残っているブログやウェブメディアの記事を通して見ていきます。
「ハン顔」「ハン人形」という単語が書かれている記事を見てみると、診断結果の奇妙なハン顔を毎日更新ネタにしていたり、ハン人形の目撃写真を掲載していたりと、イメージつきの記事が全体の8割以上を占めます。
書き込みの内容を分析するために、ブログ分析ツールで「ハン顔」というキーワードを調べると(『クチコミ@係長』を用いて調査)、登場回数の多い形容詞に「面白い」だけでなく「怖い」「悪い」(本文を拾うと「気持ち悪い」)「キモカワいい」といった感情表現を含んだ書き込みが見られ、いずれもそのビジュアルによるインパクトがユーザーの「伝えたい」心理を刺激していると感じられます。
同様に、ブログ分析ツールで登場回数の多い名詞を見ると、「電車」という関連語が上位に上がってきます。ブログ本文を見ると「通勤の電車の中で」「電車でハン顔の広告見て」「行きの山手線で」などの記述が見られ、多くのユーザーが電車内の広告で「ハン顔」というサービスを知っていることが伺えます。
そして多くのブロガーが「携帯で“ハン顔”で検索するとヒットするのでやってみて」と呼びかけています。
キャンペーン期間中(7/30〜9/30)のブログ記事数の推移を調べると、最も多くなるのが8月6日です。「電車」という名詞は8月5日頃から登場します(電車内広告の掲示開始日は8月1日)。
一方、Googleが公開している検索急上昇ワード(10分おきに更新される10位までの検索が急上昇しているワード)を見ると、8月6日の8時台〜13時台の間、8位〜3位に「ハン顔」が登場しています。
以上のことから、電車内広告の掲示開始日から徐々にブログ記事が増加し、最も多く記事が書かれた日に検索数も増加したのではないか、と考えられます。電車内広告とブログ、それらが検索行動に与える影響を考える上で、非常に興味深い結果です。
クチコミや検索ワードを分析していると、一般的にテレビの影響が最も顕著です。しかし「ハン顔」のようなケースでは、「電車の広告で知って」「○○さんのブログで見た」「友達からメールもらって」という書込みが増えていき、CM放送前にも関わらず「巷で話題の」「最近流行っている」などという言葉が見られるようになります。
ブログ記事数の急激な増加といった現象は起きていませんが、たった数日間で「流行っている」空気が彼らの間に作られていることがわかります。実際に「ハン顔」は、サービススタートから1ヶ月以内に15万回以上利用されました(プレスリリースより)。
このキャンペーンでは「ハン顔」や「ハン人形」「ハンゲリラ」という奇妙な「ネタ」があり、それを「告げる」手段として電車内広告とゲリラ広告を活用し、「広める」手段として携帯電話を使った画像の交換・公開を見込んでいたと考えられます。結果、半分のクリエイティブ(イメージ)が、人の口の端やウェブメディアに載ることで「広告」されました。
広告を「広告する」ためには、人々に「告げ」「広める」手段と、核となるネタを含めたプランニングが有効であることがわかります。
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