話がすこし入り組んできたので、ここでUnicodeコンソーシアムについて、そしてその中でのGoogleのポジションについてまとめてみましょうか。Google、アップル、IBM、マイクロソフト、これらの米国企業はUnicodeコンソーシアム正式会員です。Unicodeという規格について重要な決定をくだすのはUTCですが、ここで1票を投じる権利を持つのは正式会員をはじめとした一握りの会員に限られます。
Unicodeコンソーシアムの正式会員は、同時にほとんどが米国を代表してISO/IEC 10646の審議に参加するL2委員会のメンバーでもあります。そしてUTCの会合はつねにL2委員会と合同で開催されます。このようにUnicodeコンソーシアム正式会員の持つ影響力は、UnicodeだけでなくISO/IEC 10646にまで及ぶ大変に強いものです。
Unicodeコンソーシアムの上級職をつとめる人々は、ほとんどがこれら正式会員である企業の在籍者です。UTCおよびL2委員会のもつ不思議なまでの巨大な権能を考えれば、これら上級職の人々は「Unicode帝国」を形成していると言ってよいかもしれませんが、その頂点に立つのがUnicodeの創立者であり理事長でもあるマーク・デイビス氏です。そして彼が現在属しているのが、他ならぬGoogleなのです。
このようにUnicodeにおいて非常に強い影響力を持っているGoogleが、絵文字をUnicodeに収録したいと言い出した以上、現実的にはこれが否決されることはまず考えられません。それがよほど無理な提案でないかぎり、関係者にとってUTCでGoogleの意志が承認されることは最初から自明のことであったはずです。
ところが興味深いことに、絵文字のUnicode収録について真っ先に強い反対の声を上げたのは、昔からの仲間である「Unicode帝国」の人々だったのです。次回に紹介しますが、彼等は自分がいくら反対しても提案が可決されるだろうことは承知の上で発言しているように読めます。これこそがGoogleの開けてしまったパンドラの箱の中味です。もっとも、だからといって内紛の引き金になるとか、分裂が始まるなどと大袈裟に言い立てるつもりはありません。百家争鳴はUnicodeの伝統なのです。しかしこれらの反対の声は、今までとちょっと違うものを感じさせます。
彼等の主張を一言でまとめると、「絵文字はUnicodeのレパートリとして、ふさわしくない」ということでしょう。つまり彼等の疑問というのは、Unicodeそのものの定義に関わる本質的なものといえます。草創期からUnicodeを作りあげてきた人々の疑問ですから、やはりこれは一定の根拠があるのでしょう。その彼等の反対を抑えて、あえて絵文字を呑み込めば、それはUnicodeの変質を意味しないでしょうか。次回は、そのあたりを少し詳しく考えてみましょう。
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