Eye-Fi創立者に聞く--無線LAN内蔵SD型カードの誕生と未来

坂本純子(編集部)2009年01月07日 21時34分

 無線LAN機能が内蔵されているSD型カード「Eye-Fi」をご存じだろうか。無線LANアクセスポイントを経由して、あらかじめ設定したパソコンやオンライン写真サービスに自動的に写真を転送できる。SDカードを使用するほぼすべてのデジタルカメラで使えるのが特徴だ。

左:アイファイジャパン代表取締役の田中大祐氏、右:Eye-Fi Chief Product OfficerのYuval Koren氏 左:アイファイジャパン代表取締役の田中大祐氏、右:Eye-Fi Chief Product OfficerのYuval Koren氏

 このSD型カードを手掛ける「Eye-Fi」は、2005年に米国で設立されたベンチャー企業だ。日本でもブログを中心に話題となり、日本国内での発売が待たれていた。

 2008年8月、アイファイジャパンが設立され、2008年12月22日より発売開始となった。日本での取り組みについて、Eye-Fiの創立者であり、Chief Product OfficerのYuval Koren(ユーバルコーレン)氏に話を聞いた。

--SDカードに無線LANを搭載するというアイデアは、どんな時に思いついたのでしょうか。また、製品を作ったときのコンセプトをお聞かせください。

カメラにカードを差し込んだまま、Picasaなどあらかじめ指定したサイトやPCにアップロードできる カメラにカードを差し込んだまま、Picasaなどあらかじめ指定したサイトやPCにアップロードできる

 まず、アイデアとビジョンは2004年に思いついて、2005年に会社を立ち上げました。アイデアは、結婚式で思いつきました。私のではなくて、友達の結婚式です(笑)。

 たくさん友達が集まって写真を撮っていたのですが、結婚式が終わったあと、だれもその写真を共有してくれなかったのです。私たちのグループには、ITベンチャー、技術者やカメラマンがいました。なにかいいソリューションができるのではないかと思ったのです。

 われわれが製品に対して取り組んでいることは、人々にできる限り簡単に、まったく手間がかからない形で写真を保存して、整理して、シェアする、という経験をしてもらうことです。

--米国では、4つの製品が販売されています。販売状況はどうでしょうか。

 実際の売り上げ数は公表していません。ただ、1つ言えるのは、日本で発売する「Eye-Fi Share」がもっとも人気のある機種であるということです。

--実際に日本で販売を開始してみて、反響はどうでしょうか。

限定の「スライダーボックス」 限定の「スライダーボックス」

 いまのところは非常によいです。ブログを見ていると、この価格なら買うとか、待っていましたという声が多いようです。

 どのサイトと連携するかディスクローズしていないので(※)、ウォッチしてくれる人もたくさんいます。もっと上位機種がでるのではないかと待っている人もいますが、米国では製品を購入した後にアップデートできる機能をリリースしています。それを知る人は、この製品をいち早く手に入れてがっかりすることはないから、早めに買った方がいいと促してくれているようです。

 もう米国では製作していないのですが、日本では初回限定で「スライダーボックス」と呼ばれるパッケージで展開をします。

 これは、日本のブロガーさんがパッケージについて書いていただいていたからです。多少コストはかかったのですが、ファンを裏切らないためにパッケージにこだわりました。同じものではありません。復刻版ということでつくりなおし、日本語に翻訳したものになっています。限定品なので、喜んでいただけるのではないかと思っています。

オレンジの部分をスライドさせると、Eye-Fiカードが登場する。この開けたときのワクワク感も人気の1つ オレンジの部分をスライドさせると、Eye-Fiカードが登場する。この開けたときのワクワク感も人気の1つ

※現在、はてなフォトライフ、30daysAlbum、Movable Type、TypePad、Voxとのオンラインパートナーシップを発表している。

--米国に続いて、日本での展開を選んだのはなぜでしょう?

Eye-Fiカード Eye-Fiカード

 正確に言うと、カナダでも展開をしていて、日本とカナダは同時に進出しました。米国でプロダクトを始めたときから、日本からの反応が非常によくて、日本からの注目を集めているのを感じていたからです。

--日本ではデジタルカメラも普及していますが、携帯電話をデジタルカメラとして使う文化も着しています。中には、携帯電話で済むから、デジタルカメラを買ったことがないという人もいます。簡単な市場ではないと思いますが、日本市場をどう見ていますか。

 なぜ若い世代の人たちが携帯電話で写真を撮るかといえば、友達に見せたい、共有したいなど、コミュニケーションの手段として使いたい機能を携帯電話が持っているからでしょう。

 Eye-Fiという製品は、デジタルカメラにコミュニケーション機能をもたらします。しかも既存の製品に対してコミュニケーション機能を付けることができるので、デジタルカメラを買ったことがないという世代にもアピールできると思っています。

 もし、コンパクトカメラや一眼レフカメラにそういったシェアできる機能が付けば、ここではデジカメで撮ろう、ここでは携帯電話で撮ろう、一眼レフで撮ろうというように、消費者にとってはシチュエーションに応じた選択肢が増えると思います。

--携帯電話を脅威とは思いませんか?

 携帯電話とかデジタルカメラの登場以前を思い出してもらうと、現在のようにすべての人が写真を撮るという世界ではなかったと思います。携帯電話は、すべての人を写真家に変えてしまったと言えるかもしれません。

 携帯電話によって、確かに写真を撮るという行為は多くの人ができるようになったのですが、その中でも30%〜40%の人はもっといい機材でいい写真を撮りたいと変化していくと考えています。

 米国の市場では、まず携帯電話のカメラで写真を撮り始めて、写真を撮ることがおもしろいと思った人は、もっとハイエンドなデバイスで写真を撮りたくなるという傾向が見られます。ですので、携帯電話の後にコンパクトカメラや一眼レフカメラに自分の機材をアップデートしていくという方向には、Eye-Fiはフィットしていると思います。

--現在のラインアップは、SD型カードのみです。徐々に状況は変わりつつありますが、まだ一眼レフにはコンパクトフラッシュ(CF)搭載モデルも多くあります。CF版のリリースは考えていないのでしょうか?

 エントリー向けのEOS Kissシリーズなどは、SDカードに対応してきています。米国、ワールドワイドでも、一番シェアを持っているのはSDカード対応のカメラということで、SD型から始めています。

 現在は、SD型カードで展開していますが、CFでのソリューションは継続して開発しています。CF版のEye-Fi、もしくはコンバージョンできるものは考えていますが、いまのところ詳細は決まっていません。継続的にCFのソリューションも考えているということだけは明らかにできます。

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