「2008年、通信事業者は携帯電話市場の主役を降りた」--夏野氏が語る今後の成長鍵 - (page 2)

永井美智子(編集部)2008年12月11日 21時41分

端末メーカーは海外へ、ただし2〜3年が山場

 こういった中で、携帯電話業界はどこに活路を見いだせばよいのか。夏野氏は端末と通信プラットフォームのそれぞれに、チャンスがあると見る。

 まず端末については、いまこそメーカーは海外進出すべきだという。携帯電話でインターネット接続することが欧米でもようやく一般化しつつあるからだ。そして、その大きな要因は、「これまで通信業界主導だったのが、ネット業界主導になってきた」ことにあると夏野氏はいう。具体的にはAppleのiPhoneや、GoogleのAndroidの登場だ。

 両者は「世界のIT業界が感じている、通信業界に対するフラストレーションから生まれた」と夏野氏は分析する。

 「Googleの人と話をしたときに、『日本にはAndroid端末がなくてもいい。携帯電話からインターネットが使えるので、Googleのサービスを提供できる。でも、海外にはそういった端末がない』と言っていた。彼らは、インターネットにアクセスすればユーザーは必ずGoogleを使うだろうというもくろみを持っている。ただ、モバイルインターネットの普及が遅いので、自分たちで作ろうと考えたのではないか。携帯電話業界がやらないならIT業界がやっちゃえ、という動きに見える」

 海外のメーカーは携帯電話端末専業であることが多いが、日本の場合は家電メーカーや総合電機だ。このことが、高性能端末を作る上では有利になると夏野氏は考えている。「端末の品質の高さは世界でも認められている。調査をしたときに、『100ユーロ余計に出しても日本の端末の機能が欲しい』という声が80%もあった。日本は総合力を生かせるところが山ほどある」

 とはいえ、HTCなど台湾や中国メーカーの台頭も進んでいる。「残された時間はあと2、3年だ。2009年に何か新しいことを起こさないといけない」

「ラッキーベンチャー」はもうありえない

 夏野氏がもう1つ注目するのは、インターネットプラットフォームとしてのモバイル市場だ。特に広告やコンテンツ、サービスの分野は、今後大きく伸びると見ている。

 「広告主は超保守的。新しいメディアを試さない。ただ、テレビも新聞も以前のビジネスモデルとは違ってきている。ここからモバイル広告は本番になる可能性が高い」

 コンテンツやサービスについては、競争力が問われる時代に入ったと話す。「携帯電話市場の拡大に便乗したラッキーベンチャードリームはもうない」。市場拡大期には、経営戦略の弱い企業や品質がさほど高くない企業でも、追い風に乗って事業を拡大できた。しかしこれからは、コンテンツやサービスが選別される時期に入る。

 「コンテンツや広告といったモバイル市場は拡大し続ける。閉塞感があるとはいっても、携帯電話は最もユーザーに近いツールであり、手放せない。この利点を生かしていくことが重要だ」

 「悲観論に酔うのではなく、打てるべき手を打て、絞れるべき知恵を絞れ。ほかの市場にくらべれば成長率は高い」と業界にエールを送っていた。

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