シーネットネットワークスジャパン主催のイベント「CNET Japan Innovation Conference2008〜いよいよ本格化する動画ビジネス最前線」(CJIC 2008)が11月11日に開催された。
冒頭では、CNET Japan編集長の別井貴志が登壇。「動画に大きなビジネスチャンスが広がっていると考える方が多い一方、収益や戦略に結びつけられていないケースが多いのではないか」とした上で「インフラからテクノロジー、サービスやマーケティング、効果測定などさまざまな分野の動画ビジネス先駆者の方々に語って頂くことで動画ビジネス戦略の一助にして欲しい」とイベントの趣旨について語った。
最初の講演となったのはグーグルYouTube営業部長の牧野友衛氏による「YouTubeにおける事業の方向性」だ。
世界23カ国でサービスを展開し、毎月2億8000万人が利用する巨大サイトへと成長した動画共有サービス「YouTube」。YouTubeは現在、PCだけでなくモバイルやテレビなどさまざまなプラットフォームで視聴や動画のアップロードへの対応を進めている。
著作権に関してとりざたされることも少なくないが、コンテンツの管理システムを独自に構築。違反コンテンツを削除するだけでなく、権利者とともに収益化に向けたスキームを作りはじめているという。そのほかにもインビデオ広告をはじめとした広告商品の開発をはじめ、パートナーシップやスポンサーシッププログラムといったマネタイズに向けた取り組みについても紹介した。
次に登壇したコンテンツ配信インフラを提供するライムライト・ネットワークス・ジャパン代表取締役社長の塚本信二氏は、コンテンツの表示速度やサイトのパフォーマンスが視聴者のロイヤリティに与える影響は大きいという調査結果を紹介。サイトの環境に問題があると、消費者の行動モデルとして提唱されている「AISAS(注意、興味、検索、行動、情報共有)」のプロセスのうち、「検索」と「行動」の間でユーザーが止まってしまうため、機会損失が大きいと指摘した。
同社のインフラを活用した動画配信の成功事例として、北京五輪の映像を米NBCがオンラインで配信した事例を披露した。新しいことをやりたいという考えのもと、ライブ中継やオンデマンド配信などを実施したNBCは、北京五輪コンテンツで合計1300億ページビュー、5000万ユニークユーザーを獲得したと話した。
動画はエンターテインメントコンテンツとして注目されているが、情報源としても重要な存在だと語ったのは、マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部 業務執行役員の浅川秀治氏だ。Live Search動画検索では、検索結果に表示された動画のサムネイルにマウスオーバーすると、その動画のハイライトが自動再生されるようになっている。テキスト検索で検索結果に短い説明文が表示されるのと同じように、動画でもその内容を検索結果ページ内で見られるようにしようという取り組みだ。
また、同社はユーザー同士が質問しあえる人力検索サービス「MSN相談箱」において、近日中にQ&Aサイトの新しい取り組みとしてマルチメディア化、リッチ化を行い、動画や画像を使って質問や回答ができるようにする計画だという。これにより、“知識検索”を充実し、強化することが狙いだ。キーワード検索では答えが見つけにくいような質問でも、ユーザーが簡単に答えを得られるようにするとの考えを示した。
東芝広告部国内広告担当部長代理/WEB戦略広告チームの荒井孝文氏は、日本初となったYouTubeでの広告配信やアニメ「ヤッターマン」とのコラボレーションウェブサイトなど東芝の動画プロモーション戦略について講演した。
YouTubeでは、ノートPCキャラクター「ぱらちゃん」の動画やペットを題材に据えた動画コンテストなどを展開し、リピート視聴やユーザー間での動画の共有に結びついたという。こうした動画広告は「ブランドへの親和性が増し、イメージアップに結びついた」とのこと。
また「ヤッターマン×トウシバ」では、テレビアニメと同じ製作スタッフ、声優によるCMをウェブサイト上で紹介することにより、商品サイトへの効果的な誘導を図った。クリエイティブにこだわった動画を配信することで、「動画を見た人の購入検討率が高まった」と動画プロモーションがイメージ戦略に効果的であることを示した。
ここまで動画コンテンツの事業化の可能性、プロモーション活用の方法、インフラ面のノウハウなどが語られてきたが、忘れてはならないのが効果測定だ。これまでのウェブメディアはページビューとユニークユーザーを主な指標としてきたが、今後は動画をはじめとしたリッチコンテンツに対応する新たな枠組みが求められてくる。
ビデオリサーチインタラクティブ 代表取締役社長である荻野欣之氏は、動画コンテンツとそれに付随する広告について、適切な効果測定の考え方を提示した。ポイントは3つ、「到達レベル」、「行動レベル」、「認知レベル」の測定にあるという。
最後に、ドワンゴの顧問で、慶應義塾大学 政策メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏は、ニコニコ動画のビジネスについて講演した。
ニコニコ動画の登録者数は、2007年3月のスタートから約1年半で約980万人、まもなく今月中にも1000万人に達するという。しかし、「ニコニコ動画は、すごく過小評価されているメディア」だと語る。
他社との差別化について「動画だけでなく、コメントとともに動画を楽しむのがニコニコ動画。ほかは、動画のバリューが100%。単なる動画共有サービスではないし、そういう意味では競合ではない」と独自の優位性や今後の展開などについて説明した。
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