インターネットにより、マーケティングをとりまく環境が大きく変わったことはすでに周知の事実だと思います。その変化の1つであり、個人的にはもっとも大きなインパクトだと考えているのが「消費者がメディアになった」ことです。
CGM(Consumer Generated Media)の台頭により、消費者が自らの言葉で製品、サービスに対する使用体験などをアップロードすることは、マーケティングの主導権が企業から消費者に変わったことを端的にあらわしていると思います。
そんな時代には、テレビコマーシャルなどのマス広告で一方的に自社ブランドのイメージを伝えるコミュニケーション活動を展開してもブランドは構築できません。消費者たちは、企業が発信する広告としてのブランドメッセージを素直に受け入れるのではなく、自分と同じ興味や関心を持っている人のオンライン上の口コミを参考にし、意思決定を行っているからです。価格.com などはこの代表例といえます。
つまり、マス広告での到達力(リーチ)を大前提としたブランドコミュニケーションは企業と消費者の間に情報格差があった時代のコミュニケーションフレームであり、消費者たちがCGMでつながった時代にはブランドコミュニケーションの在り方を次のように改める必要があると考えています。
これはなにも特別なことを言っているわけではありません。「ブランドは顧客のココロの中に築かれるものであり、企業が直接コントロールできるものではない」といったブランドの大前提にたてば、当たり前の考え方だといえます。だから、私はこう言います。
ブランドコミュニケーションは、インターネットを起点にしたバイラルでやれ!
米国では2004年にWOMMA(口コミマーケティング協会)が設立され、世界中から大手広告会社や広告主が加盟しています。WOMMAによれば、口コミの種類は大きく2つの種類に分けることができます。
1つは、「仕掛け型(Amplified)」と言われる口コミを発生させるための仕掛けや話題提供を用意し、短期的に口コミを最大化させるもの。もう1つは、「自然発生型(Organic)」と言われる中長期的にじわじわと拡がっていく口コミのことです。
現在、日本で展開されているバズマーケティングやバイラルマーケティングといわれる口コミ施策のほとんどは仕掛け型で展開されているものです。これらは、ネーミングがもたらすその新奇性ゆえに話題になりましたが、本来はブーム的に扱われるべきではなく、戦略的にブランドコミュニケーションに活用されるべきものです。
2つの口コミタイプをブランドコミュニケーションの観点からアセスメントしたのが次の表です。
自然発生型で口コミが生まれることは理想ではありますが、製品やサービスがコモディティ化している現在、プロダクトのUSP(Unique Selling Proposition≒独自の売り)も簡単に構築できるわけではなく、商品力だけで口コミを誘発することは困難であるといえます。
では、ブランドコミュニケーションに活用すべきは仕掛け型、となるのですが、そのままでは問題があります。それは、「短期間で口コミが終了してしまうこと」です。さらには、口コミの数を確保したいと思うばかりに多くの人にアプローチすることで口コミターゲットがあいまいになり「ファン作り、エバンジェリスト作りといった視点が弱くなること」です。
以上から、私は口コミをブランドコミュニケーションに戦略的に活用するためには、第3の口コミタイプが必要だと考えます。
それは、消費者主導で口コミが発生することを最優先としながらも、口コミが加速し、継続的に口コミされるための環境や条件などの口コミコンディションを整備し、中長期に渡ってブランドにとって理想的なファンとしての口コミを生み出し続けてくれるメカニズムをもったものです。
換言すれば、仕掛け型と自然発生型の長所を組み合わせたハイブリッド型の口コミタイプと言えるかもしれません。
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