Appleは「iPod」部門に新しいリーダーを迎え、iPodの歴史に新たな章を開こうとしている。
同社がiPodおよび「iPhone」のハードウェアエンジニアリングの新しい責任者にMark Papermaster氏を選んだことにより、Appleが1年以上に渡ってほのめかしている通り、Appleのモバイルコンピュータはより洗練された未来へと向かうだろう。チップやシステム設計の第一人者であるPapermaster氏は、iPodラインアップを、比較的単純な音楽プレーヤーから、最初の実例としては「iPod touch」が挙げられるように、複雑で高性能なモバイルデバイスへ変換させるにあたり、統括する役割を担うことになる。
Appleの幹部として長年活躍してきたTony Fadell氏はその職を退き、Papermaster氏に道を譲る。テクノロジの歴史におけるFadell氏の地位は確固たるものだ。なんと言っても、あのすばらしいiPodを発明したのは同氏である。Appleによれば、Fadell氏と、同氏の妻で、Appleの人事担当バイスプレジデントあるDanielle Lambert氏はともに、完全にAppleを去るわけではないが、Appleで過ごす時間を減らし、より多くの時間を家族と過ごすつもりだという。
このように知名度の高い幹部の異動にはつきものだが、「自ら決断したのか、それとも強いられたのか」という疑問がわく。今のところ、Fadell氏が最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏の機嫌を損ねるようなことを何かしたという証拠は見当たらない。iPodの成長は停滞しているものの、その原因はAppleが誤った決定を下したためというより、市場が飽和したためである。
Fadell氏には、デジタルミュージックストアと融合したハードウェアの音楽プレーヤーというアイデアをAppleにもたらしたという功績がある。そのアイデアはかなりうまくいき、iPodはこれまで作られた中で最も象徴的なコンシューマエレクトロニクス製品の1つになり、Appleはテクノロジおよび音楽業界で新しい方向性を得られた。
しかし、この1年くらいでiPodの定義は変わり始めている。ひところは、iPodといえば、洗練されたデザインやスタイルと、比較的シンプルなユーザーインターフェースがすべてだった。しかし、Jobs氏は、未来のモバイルコンピュータが民衆の心をつかむかどうかは、ソフトウェアの質次第だと考えている。つまり、これまでのシンプルなiPodにトップクラスのモバイルハードウェアが必要になるということだ。
そこで、Papermaster氏の登場となるわけだ。一見すると、コンシューマエレクトロニクスの経験を持たないサーバ部門の幹部が、テクノロジ業界で最も有名なコンシューマエレクトロニクス製品の職に就くのは、少々奇妙だと思えるかもしれない。
さらに、今回の採用には法的な問題が伴うことも忘れてはならない。IBMは、同社と結んだ非競争契約の条件に違反したとしてPapermaster氏を訴えようとしており、米国時間11月4日朝、「この件は、法廷で精力的に追求する」との声明を改めて発表した。もし、Papermaster氏がIBMを競合会社とは見なさないようなAppleの事業部門を統括するつもりならば、4日の発表後においてIBMによる訴訟はさらに難しいものになるかもしれない。
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