始まりは、太平洋夏時間午前4時過ぎに何者かがCNNのiReportに記事を投稿したことだった。iReportの投稿には、「Steve Jobs氏は、重度の心臓発作を起こし、数時間前に緊急治療室(ER)へ運ばれた。内部関係者によれば、Steve(Jobs氏)が激しい胸の痛みと息切れを訴えた後、救急救命士が呼ばれたという。わたしの情報源は匿名でいることを望んでいるが、非常に信頼できる」とある。
まだ広く知られてはいないが、偽記事が送られたのはiReportが初めてではない。ブログ「MacRumors.com」を運営しているArnold Kim氏は10月3日、何者かが、匿名のIPアドレスを使って、同氏のサイトに同じうわさを送信してきたと書いている。Kim氏はそのうわさについて調査し、ねつ造だと判断した。その後、報道を追跡し、オンライン掲示板「4chan」のメンバーによって広められていることを確認した。また、同じ記事が、人気のあるソーシャルニュースサイト「Digg」で広まっていることを知った。しかし、Diggのユーザーは記事を否認しており、Kim氏と同様に懐疑的だった。
次にKim氏がうわさをチェックした場所がSAIだった。
午前6時25分、SAIは、「Apple's Steve Jobs Rushed To ER After Heart Attack, Says CNN Citizen Journalist」(AppleのSteve Jobs氏、心臓発作で救急搬送--CNN市民ジャーナリスト報道)という見出しを公開した。ブログには、報道は裏付けが取れておらず、記者が確認中だと書かれていた。SAIの創設者で有名な元技術アナリストであるHenry Blodget氏によれば、それまで、ほかの大手報道機関はJobs氏の健康に関して何も報道していなかった。
Blodget氏は米CNET Newsに対し、記事を公表する前に、スタッフがAppleとCNNの関係者に問い合わせ、信ぴょう性を確認しようとしたが、連絡がつかなかったと述べた。SAIは結局、未確認のまま、記事を投稿することに決めた。
午前6時41分、Appleの株価は急落し始めた。
午前6時52分、SAIは記事を更新し、Appleの関係者はiReportの記事を否定したと報道したと、Blodget氏は述べた。その数分後、Appleの株価は回復し始めた。
MacRumorsのKim氏は、うわさに信ぴょう性を与え、ウォールストリートを動揺させたのはSAIの投稿だったと主張する。「iReportの記事は市民ジャーナリズムの失敗として多くのサイトで取り上げられているが、決してそうではない。うわさが広まった本当の理由は、その記事が大手ブログサイトで報道されたものだったからだ」
筆者はBlodget氏に、SAIは記事の信ぴょう性を確認するまで投稿を待つべきだったのではないかと尋ねた。結局のところ、ブログはテクノロジ界で最も影響力の大きいリーダーの1人の生死にかかわる記事を扱っていた。Blodget氏は、自身の記事の処理に関して後悔していないと述べた。
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