デジタル私的録画問題に関する権利者会議は7月24日、補償金制度に関する記者会見を開き、先の文化審議会著作権分科会 私的録音録画小委員会における電子情報技術産業協会(JEITA)の対応を厳しく非難した。
「『どのような複製がなされるか予見可能であることと、経済的な不利益が発生しないこととはどう結びつくのか』とJEITAに質問したところ、得られた回答が、『著作権保護技術(DRM)が施されている場合は、契約で許諾する私的複製と同じであり、補償の必要はない』というもの。これでは質問に対する答えになっていない」(実演家著作隣接権センター運営委員の椎名和夫氏)
また、7月4日から解禁となったダビング10についても「契約で対価を徴収できない(放送)分野でなぜ、著作権者に不利益が発生しないというのか。全く説明がされていない」と改めて回答を求めていく姿勢を示した。
また椎名氏は、文化庁提案などによって一度収束しかけた補償金制度に関する議論が再び振り出しに戻ったことについて、「経済産業省の介入」が背景にあるとした。「メーカーの意をうけて突然介入してきて、一方的に権利者側を屈伏させようとしたことはゆゆしき事態。かつての電気用品安全法(※編集部注:PSE法とも呼ばれる。PSEマークの付いていない製品の中古販売を禁止したもので、リサイクル業者などへの説明が不十分であったことから大きな議論を呼んだ)導入の際にも感じたことだが、(経済産業省は)大企業側しか見ておらず、強きに流れて馬鹿なことをやる体質は変わっていない」と糾弾した。
「補償金の支払い義務は消費者ではなく、メーカーにある」――これは、今回の会見を通じて権利者団体が強く訴えたことのひとつだ。参考資料として権利者団体は、松下電器産業製のBlu-ray Diskレコーダー「DMR-BR500」の市場取引状況と、予想算出される補償金額を提示した。
インターネットの価格サイトや大手量販店における同製品の市場取引価格をまとめた結果、最高値は11万6800円、最安値は6万9994円(量販店のポイント還元分も計算)と、店舗による価格差は4万6806円にのぼる。この最高値に現行制度を当てはめて計算すると、補償金は759円(注:現行補償金制度はカタログ価格の65%に対して1%と算出されるが、同製品はオープンプライス)。「この数値を見ていただければ、『補償金制度のために製品価格が上がる』というメーカーの説明に無理があることがわかる」とした。
日本音楽著作権協会(JASRAC)常務理事の菅原瑞夫氏は「(事実上の主流録音端末であるiPodなどが対象とならない以上)録音の補償金制度は間もなく効力を失うことになる」と指摘。「『議論が尽くされていない』とメーカー側は主張するが、今までどれくらいの時間を議論に費やしてきたのか」とJEITAの姿勢に疑問を示した。また椎名氏は、これについて「制度の自然死を狙ったメーカー側の時間稼ぎ」と断じている。
権利者側は今後、小委員会での決着以外の方向性についても模索していく意向を示している。
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