社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)は5月14日、開始延期が濃厚となったデジタル放送のコピー回数制限緩和(ダビング10)について、「それぞれが示された内容に沿って整備・調整を進めていく必要がある」(常務理事の菅原瑞夫氏)とメーカー側の動きをけん制した。また、調整が難航すると見られている私的録音録画補償金制度については「ダビング10はもともと、コピーワンスによる端末機器の不具合が原因で取りざたされたテーマ。補償金制度は総務省情報通信審議会の提案当初から前提として織り込まれていたものであり、この段階になってダビング10と結びつけて主張することは理解しがたい」とメーカー側の対応に不快感を示した。
ダビング10と私的録音録画補償金制度をめぐっては、2007年10月、国内家電メーカーからなる社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)が「デジタル放送では権利者の経済的不利益発生しない」とする声明を発表。それを受けた権利者側がJEITAに公開質問状を提出するなど対立路線が強まっていた。
その後、2008年4月3日に行われた文化庁第1回私的録音録画小委員会において、JEITA側委員が「文化庁案に沿ってバランスの取れた解を見つけるために真摯に努力する」と発言したことを権利者側が評価。ダビング10は予定通り6月2日開始に向け、調整が進むものと見られていた。
しかし4月末の総務省情報通信審議会「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 第36回」でも正式決定に至らず、5月13日の第37回委員会をもって、延期が確定的な見通しとなった。
JASRACでは、先の第2回私的録音録画小委員会においてiPodなどの携帯型音楽プレーヤーやハードディスクレコーダーが補償金対象となる見通しとなったことについて、「利用者代表の委員を含め、すべての方が双手をあげて万歳というわけではないだろうが、一定の議論を重ね、『やむを得ない』という方向性に落ち着きつつある。いまだ反発しているのはメーカーだけ」(菅原氏)と指摘。記者の取材に対しても「ダビング10の件も含め、本当に一般消費者のためを思って行動しているのか、疑わしい」(同)と厳しいコメントを残した。
4月23日に行われた公正取引委員会(公取委)による立ち入り検査については「公取委に示された文書のとおりであれば、問題点は放送事業者との包括契約のみ、ということ。放送以外の包括契約については調査対象に入っておらず、具体的には調査方針を理解しきれていない」(理事長の加藤衛氏)とし、公取委の調査結果等が示された後にJASRACとしての正式コメントを公表する旨を示した。
その上で、加藤氏は「急に公取委の立ち入り検査をされて、嬉しいということはない。包括契約は30年前から、それも放送事業者側の希望で取り入れた仕組みであり、エンドユーザーにとっても利便性が高いと自負している。どこが問題なのか、という気持ちはある」との私見を示した。
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