7月22日、東京都内で開催された通信関連の展示会「ワイヤレスジャパン2008」の講演「4G+将来NW構想フォーラム」において、NTTドコモの執行役員で研究開発推進部長を務める尾上誠蔵氏が、NTTドコモの第3.9世代携帯電話(3.9G)、および第4世代携帯電話(4G)と呼ばれる次世代高速通信方式に対する取り組みについて講演した。
3.9Gは下り100Mbps程度、4Gは同1Gbps程度の通信速度を目指した技術。講演ではまず3.9Gや4Gについて、「移動体のデータ通信速度は固定回線と比べ1桁下であり、5年遅れている。だからこそ、移動体通信は今後も発展が必要だ」とその必要性に触れた。さらに「回線の幅を太くすると、より大容量のサービスが登場し、より回線を圧迫するようになる」と話し、それに対応していくためにも3.9Gや4Gの導入が必要であることを訴えた。
講演の中心は、次世代高速移動体通信方式として注目を集める「LTE」(Super3G)についての解説であった。LTEが提案された2004年当時は4Gに対する理解が進んでおらず、まずは3Gを拡張するという形態で話を進めてきた。しかし、現在では3Gの標準化団体の一つである3GPPでも4Gに対する技術検討が進むようになり、4Gを導入するための手段としてLTEに注目が集まるようになったという。標準化作業は3GPPで行われているが、現在テスト仕様書を作成している段階であり、作業は2008年いっぱいまで続くとの見通しを示した。
LTEは基地局のアーキテクチャを従来よりシンプルな形にしながら、下り100Mbps以上、上り50Mbps以上と、より高速な通信速度を実現することを目標としている。また従来の3G、3.5G(NTTドコモの場合はFOMA)と併用する形での展開が想定されており、W-CDMA導入時のように必ずしも短期間での全国展開を必要としないというのも大きな特徴とされている。欧州などGSM圏では「GSM+UTMS(W-CDMA)」という形で異なる規格が併存することがすでに一般的となっているが、GSM方式が導入されていない日本、特にW-CDMA陣営にとっては過去にあまりない事例となるだろう。
LTEは、2009年までに開発を完了し、2010年に商用展開できるようにするというスケジュールで進められている。またNTTドコモがFOMA開始時、W-CDMAを他国に先行して導入するために独自仕様を多く盛り込み、標準仕様から外れてしまった反省から、LTEのサービスインについては「3GPPの仕様でスタートする。世界の動向を注視してサービス開始時期を決める」と話している。
講演では、現在NTTドコモで行われているLTEの実証実験の様子も紹介された。室内実験では、12本のハイビジョン映像を同時に送信。およそ200Mbpsのスループットを実現した。また遅延については「要求用件の5ミリ秒以内というのは達成できている」(尾上氏)といい、この小ささを生かしたゲームのネットワーク対戦や、対戦相手のビデオ映像を双方向に送りあう様子が示された。
現在では、実際のアンテナと移動車を使った屋外での実証実験も始まっている。6本のハイビジョン映像送信を約80Mbpsで送信している様子や、先に触れた通信ゲーム対戦がスムーズに実現している様子などを紹介した。またハンドオーバーの実証実験の様子も公開され、基地局から基地局へ移動する際、映像の再生にほとんど変化がないことを示した。
高速通信技術としては、LTEだけでなく、既存の設備を生かして速度向上が可能になるHSPAの拡張形「HSPA+」も台頭している。これについて尾上氏は、「細かな拡大が続くと端末やネットワークが複雑になってしまう。ソフト変更で可能な範囲なら問題ないが、設備変更が必要なのであればLTE」と、シンプルな構成のシステムが市場に好影響を与えるとの認識を示した。
なお、4Gについては、要求用件がLTEと合致することから、LTEの拡張系である「LTE-Advanced」として標準化が進められていくという。ただし、1Gbpsの高速通信を実現するためには、100MHzまで拡張できる広い周波数の帯域幅が必要であるとの認識を示した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス