NHKはこのほど、インターネット上におけるコンテンツ不正流通への対抗策として、フィンガープリント技術を用いた新たなコンテンツ保護技術を開発した。22日からのNHK放送技術研究所「技研公開」で展示している。
フィンガープリントとは、コンテンツに短い符号を埋め込むことで「誰に販売したのか」という情報を特定する著作権保護技術。いわゆる「電子透かし」の一種として高い特定性能を持つ。
しかし、近年の不正動画アップロードにおいては、複数ユーザーが結託して符号を改ざんし、特定不能にする「フィンガープリント破り」が登場。こうした不正ユーザー側の対抗策に耐性を持つ技術研究が求められていた。
新たなコンテンツ保護技術は、フィンガープリント符号が改ざんされた場合でも、符号上から不正ユーザーを追跡、特定できるというもの。研究実験上の成果では「100万人のユーザーに対し、不正なユーザを99.9999%の確率で特定できる」(展示説明員)といる。
今回、NHKが開発した技術のポイントは、「128bitsの符号で2名までの結託に耐性を持つ符号」、および「不正ユーザーを探し出す追跡アルゴリズム」の2点という。これにより、不正アップロードコンテンツの符号から結託がされているか、されていた場合はどのユーザーが結託して作成した符号なのかを追跡、特定することが可能となったとのことだ。
NHKでは、2008年12月よりコンテンツ配信サービス「NHKアーカイブス・オンデマンド」サービスを開始する。いわゆる「見逃し対応」も含めた本格的な放送番組をネットで流通させる考えで、放送事業者としても初めての試みとなる。
ただし、YouTubeをはじめとする動画共有サイトにおける、放送番組コンテンツの不正アップロード問題は依然として解決のめどがたっておらず、コンテンツの権利を有する放送事業者の対応力が問われていた。今回、NHK自らがネット流通事業を立ち上げるにあたり、横行する不正行為の防止において技術的な回答を出した形となった。
今回の技術開発について、担当者は「不正者を特定して何らかのペナルティを課すという意図に基づいた開発ではなく、あくまで『特定される』という認識を植えつけて抑止効果を生むことが狙い」と話した。
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