ウェブマネーが株式市場から失望--NEOの注目度も低下

 電子マネーのウェブマネーが株式市場から失望されている。ジャスダックが2007年開設した新市場「NEO」の第2号上場案件として華々しく上場した銘柄だが、現在の株価は上場来安値圏で停滞。再浮上の兆しも見えず、厳しい展開が続いている。

 ウェブマネーは2007年12月6日に新規上場。サーバー管理型の電子マネー「WebMoney」の発行、販売を手掛ける。今後、市場が急拡大する電子マネーを手掛ける有力企業として株式市場の注目度は高く、上場初日は買い注文が殺到して値段が付かなかった。上場2日目に付けた初値は公開価格10万円に対し35万円。上場3営業日目の12月10日には45万3000の高値を付ける場面もあった。

 NEOは先端企業向けの新興市場で、起業から間もない時期での資金調達の場として開設された。上場基準に積極的なIR(投資家向け広報)活動を盛り込み、話題を集めた。そのひとつが「マイルストーン開示」。通常、新規上場の際には1期分の業績予想を開示する。しかしNEOに上場する企業には、3期分以上の事業計画の開示を義務付けている。

 ウェブマネーは上場時、3年後の2010年3月期に売上高460億円(2007年3月期実績比2倍)、経常利益10億円(同79%増)を掲げていた。しかし、この計画は株式公開から半年も経たないうちに大幅に下方修正されることとなる。

 5月14日、ウェブマネーは3月期決算を発表した。2008年3月期業績は利益面で上場当初の計画を若干下回って着地。マイルストーン開示で掲げていた2009年3月期以降の業績計画についても利益面を下方修正。2010年3月期は売上高こそ当初より増額して480億円としているが、経常利益は7億2000万円(当初計画比28%減)へ減額されている。

 マイルストーン開示の修正の背景は、事業環境への見込みの甘さにある。加盟店による決済額こそ増加が続いているものの、「WebMoney」の未使用残高が減少傾向にある。オンラインゲームなどデジタルコンテンツの市場拡大も、中期的には利益率悪化が懸念される状況となっている。

 ウェブマネーはもともと、オンラインゲーム業界への依存度の高さが懸念材料として挙げられていた。オンラインゲーム業界には成熟感が強まってきており、そこに依存するウェブマネーも近い将来、成長が鈍化する可能性があるとの指摘があった。

 2007年夏に開設されたNEOには現在、4社が上場している。ウェブマネーだけでなく、第1号上場案件であるネットワークソフト開発のユビキタスの株価も低迷。ユビキタスも5月8日の3月期決算発表に併せてマイルストーン開示の大幅な下方修正を実施している。

 また、第3号上場案件である再生医療のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングもウェブマネーと同日の14日に3月期決算を発表。2009年3月期の業績見込みはマイルストーン開示で掲げた計画より、赤字縮小が進まない見込みとなっていた。

 株式市場の期待を集めて発足したNEOだったが、上場企業の業績成長失速を背景に注目度は急速に低下。マイルストーン開示の相次ぐ下方修正もあり、復活色を強めている新興市場の「悪者」とも見られてしまっている。ジャスダックと大阪証券取引所の統合が進んでいることもあり、市場からは「存在意義が揺らぎつつある」との厳しい指摘も聞かれるようになってきた。

 ウェブマネー株については計画修正から下値模索も展開に入っている。2月12日に付けた上場来安値12万9000円を下回ってしまうと、見切り売りの加速により調整の長期化も想定される。

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