ユビキタスの記録的な初値を受けて、ジャスダックの新市場NEOの第2号上場案件にも注目が集まっている。12月6日にNEO上場を控えるウェブマネーの市場の評価を探った。
ウェブマネーはサーバー管理型電子マネー「WebMoney」の発行、販売を手掛ける。サーバー管理型電子マネーは、ICカード型と違いリーダーなどの専用機器が不要で匿名性、安全性の高さが特徴。「WebMoney」はプリペイド(前払い)式となっており、16ケタの英数字で形成されたプリペイド番号を入力することで利用できる。
2008年3月期は非連結売上高310億3000万円、経常利益6億円を計画。「WebMoney」の前期の決済先はオンラインゲーム向けが84%を、販売先はファミリーマートやローソンなどのコンビニが75%を占めている。立ち上がったばかりの企業によくみられる一極集中型の収益体質と言える。
今後は、「ウェブマネー ウォレット」の機能を拡充してユーザーの安全性、利便性向上を高めて会員数を増やす考え。マイルストーン開示では2010年3月期に売上高460億円、経常利益10億円を掲げている。「ウェブマネー ウォレット」とは最大20万円分までチャージ可能なお財布機能で、16ケタのプリペイド番号を入力せずに任意に設定したIDとパスワードだけで決済が可能なツール。これによる利便性向上でユーザーを囲い込む考えだ。
ジャスダックの新市場NEOは、ユビキタスのロケットスタートを受けて俄然、注目を集めている。そして、そのユビキタスを追ってNEOに上場するのがウェブマネー。市場からの吸収金額は、先に4倍高発信したユビキタスと同規模の10億円弱だ。
ウェブマネーのNEO上場が承認された翌日、11月5日にはウェブマネーの親会社であるフェイスが一時、値幅制限いっぱいのストップ高まで買われた。ウェブマネー上場による含み益拡大を想定した先回り買いが入ったわけで、ウェブマネーへの市場の期待の高さを示した格好だ。
フェイスはコンテンツ配信などを手掛ける東証1部上場企業で、ウェブマネーの発行済み株式の47%(目論見書ベース)を保有する。
ここまではIPO(新規上場)市場が活気付いている時期に見られる現象だが、フェイス株は同13日もストップ高に買われる。13日はユビキタスがNEOに新規上場し、大量の買い注文を集めて値段がつかなかった日だ。ユビキタスが前評判以上の人気を集めたことで、次に控えるウェブマネーへの市場の期待が更に高まったもようだ。
市場では、ウェブマネーの類似企業として決済処理サービスのイーコンテクストやSBIベリトランス、代金回収サービスのウェルネットなどを挙げている。ウェブマネーの2008年3月期予想PERは約13倍。これはイーコンテクスト、SBIベリトランスの約20倍、ウェルネットの30倍と比べて割安と評価されている。
ちなみにウェルネットは、三井住友銀行との戦略的提携を締結して16日の取り引きでストップ高に買われていた。
ウェブマネーへの追い風は強まっているようにみえるが、手放しで評価されているわけではない。
ひとつはオンラインゲーム業界への依存度の高さ。オンラインゲーム企業業績の減速感が表面化しつつあり、そこに依存するウェブマネーの成長性の限度も懸念されているのだ。もうひとつは親子上場であること。ウェブマネーはフェイスの連結子会社であり、市場では「ウェブマネーの評価は、既にフェイスのPERに織り込まれている」との指摘もある。上場意義自体が疑問視されているのだ。
現在会員数を伸ばしている電子マネーは、強制力のあった「SUICA」以外はポイント割引による普及がほとんど。それを行っていない「WebMoney」の伸びが予想以上に早く頭打ちになるのではとの懸念もある。
とはいえ、NEO上場の際は初値買い人気は高まりそうだ。「内容はともかく、先進的そうな社名だけでも買い」や「野村証券が主幹事を努めたユビキタスが大成功しており、ウェブマネーの主幹事である大和証券はメンツにかけて失敗するわけにはいかないはず」との斜めからの意見も聞かれた。
蛇足だが、ウェブマネーの株主に有力ベンチャー企業のほか、USEN社長の宇野康秀氏や楽天取締役執行役員の島田亨氏など著名人の名前が並んでいることも話題となっている。
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