ここに興味深い質問がある。ソーシャルメディアの世界ではアイデンティティはどの程度重要なのか。例えば、誰かが別の誰かを「友人」に設定した場合、友人として設定されたユーザーの人間性はその人にとって本当に重要なのだろうか。
実は、この質問に対する答えらしきものが少しは得られるかもしれないのだ。その理由は、「Rocketboom」の創設者であるAndrew Baron氏が、自身の「Twitter」アカウント(1500人以上の「フォロワー」付き)をeBayで販売すると発表したからだ。そして米国時間4月13日の午前中の時点でオークションの価格はすでに560ドルまで上昇していた。
「わたしは自分のTwitterアカウントに強い愛着があるが、これまで本当に利用したかった方法でそれを使ってこなかったのではないかという気がしている」とBaron氏はeBayオークションの説明文で述べている。「率直に言って、わたしの『つぶやき』をタイムラインで表示してくれているフォロワーたちには申し訳ないと思うが、わたしは自分が本当にやりたかった方法でこのメディアを利用できていない。また、RocketboomでもTwitterアカウントを持っているのでそちらの投稿を増やしていき、さらに、自分が次にやりたいことを実現するために新しいアカウントを開設しようかとも考えている」(Baron氏)
「自分が保有しているアカウントをそのまま削除してしまうのはばからしいと思うし、特に同じような興味を持っていて発言したいことがあった人や、何らかの有意義なやりとりに参加したかった人がいるならなおさらそうだ。金額という点では、全く何も期待していないし必要ともしていない。だから最低入札価格は設定しないことにした。いくらでも付いた値段で売るつもりだ。(中略)落札者はわたしのアカウントとともにフォロワーも全員手に入れることになる」(Baron氏)
Baron氏が指摘しているのは、Twitterではユーザーがアカウント名を変更できるので、最終的に同氏のアカウントを購入した人は誰でもIDを変更でき、しかも1500人を超えるフォロワーもそのまま引き継がれるということだ。
「だから基本的には、あらかじめオーディエンスが付いている自分名義の新しいアカウントを入手するようなものだ」(Baron氏)
この話のもう1つ興味深い点は、Baron氏がアカウントをeBayに売りに出した後も実際にかなりの数の新しいフォロワーが付いていることだ。Baron氏は売りに出した時点でオークションの説明文に1397人のフォロワーがいると書いていた。現在ではその数は1500人を超えている。
一方、フォロワーたちはあくまでBaron氏に興味を持って追いかけていることも同氏は認めている。
「また、あらゆる動的な集団がそうであるように明らかにリスクもある。わたしのフォロワーはいつでも去ることができるのだ。この点については何の保証もない。人は来てまた去っていく、世の中とはそういうものだ」(Baron氏)
これは間違いなく重要な点だ。Baron氏がTwitterでかなりの規模のフォロワーをオーディエンスとして引きつけているのは確かである。しかし、注目度の高いTwitterアカウントを追跡しているTwitterholicというサイトによると、Baron氏のアカウントは上位100位に入っていない。しかしフォロワーたちはBaron氏という人物、そしてその発言内容に興味を持っている。
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