見せる場所があるから、人は動画を作る--ニコニコムービーメーカー開発者に聞く

永井美智子(編集部)2008年03月24日 11時19分

 「“動かない動画”作成支援ツール」――これが、ニコニコ動画がユーザー向けに無償で提供している動画作成ソフト「ニコニコムービーメーカー」のキャッチコピーだ。“動かない動画”というのは不思議な言葉だが、これは動画の取り込みに対応していないことを指している。写真や画像などの静止画をスライドショーのようにつないで、字幕や音楽を付けられるだけという、機能の少なさが特徴になっている。

 「今まで動画を投稿したことのない人に、動画を作って、それを見た人からコメントをもらえる楽しさを味わってもらいたい」――ニコニコムービーメーカーの開発担当者である、ドワンゴのニコニコ事業本部事業推進部第二セクションの曽原広行氏は、開発コンセプトをこのように語る。

 動画作成に関する知識のない人でも簡単に動画を作り、そのままニコニコ動画にアップロードできるようにする。そのため、できるだけ画面遷移をなくし、ファイルをドラッグアンドドロップで追加していけば動画が作れるようにした。

080324_nico.gif ニコニコムービーメーカーの操作画面。下部分でパソコン内に保存された写真や音声ファイルなどを選び、ドラッグして上部分のタイムラインに乗せていけば動画が作れる

 しかし、動画が扱えないことについてはユーザーから不満の声も多く、一部では「紙芝居メーカー」などとも揶揄された。開発を担当した株式会社インターネット(以下、インターネット社)代表取締役社長の村上昇氏は、「動画に対応していないことで、不満が出ることは予想していた」と話す。

 実は、ニコニコムービーメーカーには当初、動画編集機能も備えていた。「リリース直前まで動画をサポートしていた」(村上氏)が、それをあえて削った。理由は「flv形式で動画を加工すると、画質がかなり落ちるため」(村上氏)だ。作った動画の画質がツールによって下がってしまっては、せっかくの動画制作意欲も削がれてしまう。その点を懸念したようだ。

 ただ、静止画のみの対応としたことで、いくつかメリットも生まれた。1つは、静止画の画質を落とさずに動画にできること。これはユーザーの間でも評価を得ている。

 また、作成した動画のファイルサイズが小さくて済むことも大きい。これにより動画のアップロード時間が短くなり、ユーザーのストレスが軽減される。また、ニコニコ動画にとっても回線の負担が軽くなる利点がある。

 このほか、静止画のみ対応という制限を付けたことで、ユーザーに工夫を凝らすことを促す結果になったという。「動画に対応していたら、撮影した動画をただアップロードするだけになっていた可能性がある。静止画しか使えないからこそ、いろいろな面白い動画が生まれている」(村上氏)。静止画をつなぎ合わせて作ったアニメーションなど、ニコニコムービーメーカーならではの作品が登場してきているという。

 たとえば以下の2つはニコニコ動画に掲載された動画で、いずれも同じ素材を使ったものだ。最初、上の動画が投稿されていたが、画質が悪いとして、ニコニコムービーメーカーを使った作品を「改良版」として再投稿した。静止画をつないでいるだけだが、パラパラ漫画の要領で、綺麗な映像のアニメーションに仕上がっている。

上が最初に投稿された動画、下がニコニコムービーメーカーを使って再度投稿された動画

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