前回、社員の方向性(考え方)を合わせるための人材育成の勘所は下の3点であると言いました。
(1) 会社の考え方に共感してもらえる人材を育成
(2) 熱意(やる気)を持った人材を育成
(3) 能力の高い人材を育成
さて、今回は上記(1)の「会社の考え方に共感してもらえる人材を育成」に対しての具体的施策をご紹介していきましょう。
最初に結論から言ってしまうと、多くの社員に会社の考え方に共感してもらうためにやるべきことは大きく3つあります。
(a) 会社の基本理念を作り、なんども繰り返し考え方を伝える
(b) 社員から信用される会社になる
(c) どうしても考え方に共感できない一部の人には会社を辞めてもらう
それではこの3ステップがなぜ重要なのかを詳しく見ていきましょう。
まず1つ目です。最も基本的なこととして、会社の考え方に共感してもらうためには、社員がその考え方を知り、理解する必要があります。下の例を見てください。ジョンソン・エンド・ジョンソンは非常に明確な基本理念を作ることで、全社員に浸透を図り、実践を促しています。
ただし、基本理念を作る際に気をつけなければならないことがあります。京セラやKDDIの創業者である稲盛和夫氏はこのようなことをいっています。
「人間が全身全霊で打ち込むには大儀を必要とします。『大儀』とは個人の利益でなく、世のため人のためという『公』の利益のことです。当時の京セラには資金も技術もありませんでした。しかし、大義名分のある目的、すなわち経営理念を掲げたおかげで全従業員の心がひとつにまとまったのです」
私利私欲のための理念では、多くの社員に共感してもらうことはできません。「大儀」が感じられる理念を作成しなければいけません。
さらに、人は大変忘れやすい生き物ですから、繰り返しそれを伝える必要があります。下に挙げた多くの経営者が語るように、ここで重要なのはコミュニケーションの質ではなく、回数です。考え方の伝達にどれだけの時間を割いているか、これが社員への浸透度を決定します。
2つ目として、「社員から信用される会社になる」とありますが、会社が社員を大切に扱い、社員が会社を愛してこそ、本当に社員が会社の考え方に共感します。人間関係に置き換えてみれば、当たり前のことです。信用していない人の意見に共感できるでしょうか。同意はしても、共感はできないのではないでしょうか。
社員から信用される会社になるためには、第一に「社員を裏切らないこと」、第二に「社員に働き甲斐を感じてもらうこと」が重要です。
社員が「裏切られた」と感じるのは下のようなときです。
裏切られたと感じた社員は、会社の理念に共感するどころか、「どうせ口だけだろう」と、疑いのまなざしを向けることでしょう。
あなたの会社は社員から信用されているでしょうか?次ページ文頭にある十か条でチェックしてみてください。
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