先に述べたようにソーシャルグラフから導き出される結果には「気付き」を与える傾向があります。
例えばあるウェブサイトにコンテンツマッチ型の広告が掲載されていたとします。コンテンツマッチ型広告は、そのウェブサイトに含まれるキーワードを解析し関連性のある広告(広告主が関連性があると判断した広告)を表示するのですが、大抵の場合、車というキーワードが書かれたウェブサイトには車の広告、旅行というキーワードが書かれたウェブサイトには航空券やホテルの広告、といった具合にユーザーがある程度想定できる広告が表示されます。
これはこれでユーザーが求めていた商品の広告である可能性があり、一定の効果を発揮するのですが、キーワードからは想定し得なかったソーシャルグラフから導き出される「気付き」を与える広告が加わることで、コンテンツマッチでは反応してもらえなかったユーザーをすくい上げることができる可能性が増します。単純に気付きのある広告は、想定しうる広告よりも興味を得やすい可能性もあると言えます。
従来の広告配信の手法として、ユーザーのデモグラフィックやプロファイリングからセグメンテーションされたターゲティング広告や行動ターゲティング(ビヘイビアル)がありますが、これらはあくまでも一人のユーザーを分析しその人が興味を持ちそうな広告を配信するものです。それに対して、ソーシャルグラフを利用した広告配信は、インターネットの特徴である集合知を利用するものであり、この点が大きく異なると言えるでしょう。
さらに、検索という行為にも新しい方法を提供する可能性があります。
現在の検索エンジンはキーワードやディレクトリーを辿ることで目的の情報に到達するものです。しかし一人のユーザーが情報を取得するために想定できるキーワードには限界があり、想定しきれないキーワードでなければ辿り付けない情報が存在した場合には、目的の情報を見つけることに苦労するでしょう。
これに対してソーシャルグラフを利用した情報の検索行為は、あらかじめ目的とする情報がどのようなキーワードで検索可能かわかっている場合のような簡素さは無いものの、集合知を解析しグラフ化することで「気付き」という、そのユーザーが想定し得なかった方向性を提供することができます。結果的にキーワード検索では見つけ難かった情報に到達できる可能性も出てきます。
「集合知」から生成される「ソーシャルグラフ」。ここに存在する「非明示的なリンク」が、ユーザーに「気付き」を与えることで、インターネットの世界に新たな利便性とビジネスの可能性を生み出すことでしょう。
ポータルサイト ライブドア立ち上げ、ライブドアブログを初めとした、50以上のネットサービスを立ち上げる。同時に広報部長も兼任しライブドアのPRに貢献した。現在はゼロスタートコミュニケーションズにて社内外のサービス企画とプロモーションのコンサルティングに当っている。著書に「CGMマーケティング」、「ブログ炎上」、「情報化白書2007」がある。
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