Will Poole氏がこの決定をWindows Vistaの担当チームに知らせてから1カ月後の2006年2月、MicrosoftのWill Johnson氏は電子メールの中で次のようにもう少し詳しく説明している。
「われわれはVista Capableマシンの要件から「Windows Vista Display Driver Model」(WDDM)を除外した。最新のCPUと512MバイトのRAMという要件はそのままだが、Windows Vistaのグラフィック要素(「Aero Glass」)を実行するのに必要な特定のコンポーネントは要件から外された。これは、945チップセットの製造供給に関してIntelから示された多大な懸念と、米国で小売販売の年度始めとなる4月1日までにできるだけ多くのPCにロゴを付けたいという当社の要望に基づくものだ。小売を促進するために、この決定によって小売業者が扱うVista Capableマシンの種類を拡大すべきであり、その一方で、945チップセット搭載マシンの生産を最大限に増やすようOEM業者(と、ひいてはIntel)に積極的に働きかけるべきだ」
やり取りされた電子メールによると、Microsoftのマーケティング方針がIntelの供給面での懸念に従うという決定に、Microsoft内部の大勢が驚いたという。この時点で、Microsoftは従来の立場を変え、「Vista Capable」マシンと「Vista Premium Ready」マシンの両方を推進する二重構造のプログラムを作る必要に迫られた。
Vista Capableのロゴシールは、そのPCが単にWindows Vista Home Basicを実行できるということしか示しておらず、PCメーカーは自社のPCをVista対応PCとして宣伝できるものの、その認定を受けるための最低条件を満たす程度のハードウェアでは、Vistaにアップグレードする大きな理由の1つである改善されたグラフィックスを満足に扱えないという事実をごまかしている。こうした混乱はまさに、Microsoftと提携PCメーカーが最初に要件を策定した時点で避けたいと考えていた事態だった。複数の電子メールは、Poole氏が決定を下す前後にこうした懸念が広く共有されていたことを示している。
特に激しく反発したのはHewlett-Packardだった。同社は、Intelの945チップセットがVista Readyプログラムに対応する唯一のチップセットになると考え、945チップセットをより積極的に採用することを決めていたからだ。
MicrosoftのMark Croft氏は、Poole氏の電子メールに対してこう返信した。「われわれは、Vista Capableの要件からWDDM対応を外すことをうまく説明する必要がある。1年半以上前の開始時点から、WDDMを要件にしてきたのだから」
だがおそらく、こうした動きに最も驚いたMicrosoftの幹部は、Vista開発チームを率いるAllchin氏だっただろう。
Allchin氏は、Poole氏の電子メールに対するスレッドでこう返信した。「われわれは間違いなくこの件でへたな仕事をした。私は意思決定のプロセスに関与しなかったが、あなたが合理的に考えたことと信じているので、今回の決定を支持する。だが、ここで示されている件について、顧客にはもっとましな対応をしなければならない。関与せざるを得ない厳しい状況に私を置いたのはあなたなのだから、なおさらだ。これはよいことではない」
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