藤田 やはりある種のプレミアム感──単なるビジネス機ではなく、持っていて楽しく、さりげない自己主張にもなるツールとしての存在感をアピールしたかったからです。
『LOOX R』を手がける前には携帯電話のデザインを担当していましたが、店頭に「つや黒」だけを並べるというのは、実を言うとかなり勇気の要る選択なんです。単純に「売り場で指紋が付きにくい」という都合だけを考えると、どうしてもマットで表情の乏しい黒を選びたくなる。でも今回は、やはり所有する楽しみや愛着を優先して、あえてグロスブラックを強く推しました。
藤田 液晶を開いて電源をオンにした瞬間、各種ステイタスを表示するLEDランプがキラッと光ります。従来モデルは赤・緑などの色も使っていましたが、今回はよりシックな青色に統一しました。あとは「LOOX」のロゴが白く浮かび上がる演出も採り入れています。細かいこだわりですが、こういうユーザーとマシンのコミュニケーションというのが愛着を持っていただくうえでは意外に重要。これは携帯電話のデザインから学んだところが大きいですね。
後藤 もともと私たち構造設計部隊は、デザイン部隊と互いに一歩も引かない状況で仕事をすることが多いんですね。今回はフォルムに微妙な工夫が加えられていることもあって通常以上に大変でした。いつもはデザイン側にある程度折れてもらうことも多いのですが、今回はデザイナーのリクエストをほぼ受け入れましたので(笑)。
これからのビジネスモバイルノートでは、デザイン性こそが大きなアドバンテージになりうる──そのコンセンサスは技術者たちの間でもきっちり共有できていましたので。細かい部分ではいろいろ議論を重ねましたが、納得して仕事をすることができました。
後藤 先ほど藤田の話にも出ましたが、まずは手前に行くにしたがって微妙にシェイプされていく本体フォルムですね。筐体のパーティングライン(金型の分割面)は、本来取り付け面に対して平行であるべきですが、今回は斜めになっています。そうなると内部のレイアウトを再検討しなければいけないし、金型自体の作りも変わってくる。つまり構造設計だけではなく、その後の製造工程にもインパクトが及ぶデザインなんです。
そのこととも関係しますが、実は今回のモデルでは初めて、内部パーツを上から吊り下げる構造を採用しました。通常のモバイルノートでは、キーボード面を開くと、底面側に回路基盤やHDDなどがぎっしり並んでいますよね。それを逆にキーボード側からぶら下げたわけです。もちろん設計的には下から積み上げた方が、構造をイメージしやすいのですが…。
後藤 「軽量化」と「堅牢性」を両立させることです。構造設計において、衝撃から内部を守る手法には大きく2つが考えられます。1つは頑丈なカバーで内側をしっかりくるむこと。もう1つは逆に中にわざと空間を作って、外からのショックを伝わりにくくすることです。
前者はシンプルな半面、外壁にそれなりの強度が求められるために軽量化とは相反してしまう。今回わざわざ上側からパーツを吊したのは後者の発想で、底面との間にスペースを作ることで、下からの衝撃に強い構造を作りたかったからです。設計にはかなりノウハウが必要ですが、底面の板厚をかなり薄くすることができ、軽量化と堅牢性を両立できました。
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