IT業界を生き抜く処世術は「遊びは真剣に、仕事は遊び心で」(第10回: 宇佐美進典) - (page 2)

--勉強はやめても、結果的に1996年の新卒でトーマツコンサルティングに入られますが、入社前と後のコンサルティングに対するイメージはいかがでした?

 当時は今から考えれば甘い考え方でしたね。2〜3年働いて海外にMBAを取りに行き、戻ってきたら外資系に入り、35歳までに起業をしようかなと。これは本当に甘かった。

 また、コンサルティングは戦略やマーケティングに関して経営陣と会話をしてというぼんやりとしたイメージがありましたが、入社後の僕のプロジェクトは、信販会社のシステムリプレースのプロジェクトだったんです。システムに関して、このプロジェクトで学んだことは大きかったのですが、やはり当初抱いていたイメージとは大きく違いました。

宇佐美氏 「学生結婚の時は周りから止められましたが、実際に結婚して生活をしてみたらなんとかなりましたし、ベンチャーに行く時も止められましたが、行ってみたら何とかなったんですよ。だから、どんなことでも思いっきりやればいいかなと思っています」

 ちょうどこの会社を立ち上げてしばらくした後に、「ビットな集い」(ビットバレーの前身)で尾関茂雄さん(現Zeel代表取締役社長兼CEO)と知り合い、一緒に何かをやろうという話があがったのが、アクシブドットコム設立のきっかけですね。求人情報の検索エンジンの開発はその後立ち消えになってしまい、自分が立ち上げたイージーネットよりも尾関さんと一緒に立ち上げたアクシブドットコムのほうがメインになってしまったわけです。

--第1回の「ビットな集い」の話題が出ましたが、具体的に何を一緒にやろうという話になったんですか?

 かなりの頻度でICQというメッセンジャーで尾関さんと会話をする中で、インターネットで自分達でオンラインショップをやるのではなく、そういったショップに対してネット上でのプロモーションを支援するサービスをやろうという話になり、1999年の10月に株式会社アクシブドットコムを立ち上げました。創業時のメンバーは3人で、僕と尾関さんとシステム開発担当のアルバイトです。

--オンラインプロモーションを軸としてアクシブドットコムを立ち上げましたが、一番最初に始めたサービスは「MyID」の運営だったんですよね?

 そうです。「MyID」ではネットで様々なサービスのIDとパスワードをバラバラに管理する手間を省いて1つのIDで様々なサービスを利用できるようにしようとしていました。今で言うOpenIDの概念に似ていますね。

 実は設立当初は、「MyID」以外にもアフィリエイトASP事業も検討していました。

 しかし、立ち上がったばかりのベンチャーで2つの事業を同時に展開していく軸で行くのは大変でしたから、既に立ち上げていた「MyID」に絞ることを選択しました。ですが、「MyID」だけでどうやって収益化していくのかは見えていなくて、まずは懸賞サイトとして一度しっかり立ち上げようと決定したのが2000年3月の話ですね。会社を立ち上げて半年くらいは軸がフラついていました。ただとにかく世界を変えるようなすごいことをやっていこう、という想いだけは変わりませんでした。

--その後、2人の狙い通り事業は拡大し、2001年9月11日にサイバーエージェントグループに入り、2005年11月には会社名をECナビとして更に事業の成長は加速していかれますが、ECナビブランドに関する思い入れを教えて下さい。

 以前は新たなサービスをECナビのブランドの元で立ち上げて行くという方針でしたが、最近はすべてをECナビのブランドでという方向ではありません。会員データベースを最低限共有していれば、素早く新しいサービスを立ち上げることのほうを重視しています。

 2006年10月から事業部制にして、事業部ごとにサービスを提供して行く方向に進めており、ソーシャルブックマークサービス「Buzzssurl」は独自の展開をしています。

「やればなんとかなる」

--先程から宇佐美さんの話を伺っている中で、会社を取り巻く環境もさまざまな形に変わって行く中で、その状況を素直に受け止め、1つの形に捕らわれないでポジティブに持っていく力があると感じています。このポジティブさの根幹には学生結婚という人生の岐路が影響していますか?

 そうですね。一度レールをはずれた人間には失う物が何もないんですよね。やらないで後悔するよりも、やって反省すればいいじゃないかという思いは強いです。

 学生結婚の時は周りから止められましたが、実際に結婚して生活をしてみたらなんとかなりましたし、ベンチャーに行く時も止められましたが、行ってみたら何とかなったんですよ。だから、どんなことでも思いっきりやればいいかなと思っています。

--「やればなんとかなる」という言葉に僕自身もいつも勇気づけれます。さて、少しECナビの社内活動に関してお聞かせ下さい。ECナビには社内運動会の「ナビリンピック」や「サークル活動」があると伺っていますが、それ以外の活動についても教えてくれませんか?

 僕のこれまでの経験上、モチベーションの高い組織を作るには社内の交流が非常に大事だと感じています。また、会社がフラットな組織だけに相互の組織の溝をなくす意味でも、部署をまたいで行う運動会やサークルは良い影響を及ぼすのではないでしょうか。さらに、お互いの仕事内容などを知ってもらうという意味で「交流ランチ」というランダムで違う事業部の人たちとのランチタイムなども設けています。

--フラットということは、若手社員もフラッとやってきて「社長ちょっといいですか?」というイメージがありますが、社長の席もノーパティションで社員の皆さんに混ざっているんですか?

 以前は、一緒だったんですが、あるとき席の関係で「社長、ここ使うんで」と席がなくなり社長室をつくられてしまいました(笑)。ガラス張りなので、動物園の檻にいるような感じですが。

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