B・ゲイツ氏の「創造的資本主義」は世界にとってプラスか? - (page 3)

文:Declan McCullagh(CNET News.com) 翻訳校正:矢倉美登里、大熊あつ子、緒方亮、福岡洋一2008年02月12日 11時05分

 つまり、社会的責任といってもそこまででしかないということだ。

 Gates氏も、社会的責任を果たすことが利益になるというだけでは、貧困にあえぐ地域に食糧を供給し必要な衣服を提供するのに十分な誘因にならないかもしれない、と警鐘を鳴らしている。Gates氏は、評価が一種の代替通貨になると言う。「利益が得られない市場では、評価がその代わりになる。利益が見込める市場では、評価はプラスアルファの誘因となる」と同氏は話している。

 企業幹部にとっては、たぶん祝宴で賛辞を送られる機会も増えるだろうから、けっこうな話だろう。しかし、たとえばスプーンメーカーの株を少しずつ保有する(そして全体では株主の大多数を構成する)一般の株主や確定拠出型年金(401K)プランの加入者が、「社会的意識」の高い企業の株を選び、そのわずかな部分を所有することで得られる「評価」に価値を見いだすかといえば、それはわからない。

 少しがっかりなことに、Gates氏の発言には重要なポイントが欠けている。貧しい国が貧しいままで、市民が命を救う薬さえ手に入れられないのは、裕福な国からの支援が不十分だからではない。

 貧しい国がいつまでも貧しいのは、そうした国の政府が堕落していて民主主義的でなく、民衆を抑圧しているからだ。そうした国では財産権が保証されず、起業家を目指す人々が家を担保にして資金を借り受ける機会が失われている。裁判のシステムは機能しておらず、個人どうしで契約を結ぶことが制限されている。外国からの支援金は、堕落した役人によってスイス銀行の口座に隠される(スイス銀行の秘密口座に隠された金額は、サハラ砂漠以南のアフリカだけで、2005年には約1500億ドルあった)。そして、食料援助は国内の農作物の価格を下落させ、地元の農民を苦しめる

 不幸なこれらの国々では、「非創造的資本主義」ではなく、上記のような問題が貧困や悲劇の根本原因となっていることが多い。近代資本主義の父であるAdam Smithは、200年以上前「国富論」を書いたときすでに、このことを理解していた。「(企業人は)自分の利益を追求することで、社会の利益そのものを追求しようとするより効果的に、社会の利益を実現できる場合が多い。公共の利益のために交易を行うふりをする人物が、素晴らしい成果を上げたという例を私は知らない」

編集部注:CNET News.comの副編集長であるMichael KanellosとワシントンDC駐在記者であるDeclan McCullaghが、発展途上世界における問題を軽減するためリソースを分配するよう企業に求めているBill Gates氏の訴えについて意見を戦わせている。Kanellosの記事はこちら

筆者略歴
Declan McCullagh
CNET News.comのワシントンDC駐在記者。以前は数年間にわたって、Wired Newsでワシントン支局の責任者を務めていた。またThe Netly News.やTimes誌、HotWiredでも記者として働いた経験もある。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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