セマンティックウェブ:ユーザー層での普及の起爆剤となるキラーアプリケーションは? - (page 2)

文:Alex Iskold 翻訳校正:吉井美有2008年01月29日 08時00分

セマンティック知識データベース

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 では、今可能で現実的なことは何だろうか。成長しつつあるアプリケーションの中で、筆頭はセマンティック知識データベースだろう。ここでは、FreebaseとTwineという2つの例を見ていく。FreebaseがWikipediaのセマンティック版を構築しようとしているのに対し、Twineは人物に関するセマンティックデータベースを狙っている。どちらもデータベースであり、知識管理を狙っており、Wikipedia的だ。これら2つがWikipediaよりも優れている点は、これらが情報を構造化された形で表現しており、検索をサポートしていることだ。違いを理解するために、Alicia Keys氏に関する記事をFreebaseWikipediaで見てみよう。一見するとどちらも似ているが、FreebaseはAlicia Keys氏がブルース歌手であることを「知って」いて、他のブルース歌手も知っている。Wikipediaではブルースは単なる別のページに過ぎず、音楽のジャンルではない。従って、Freebaseはすべてのブルース歌手のリストを聞かれれば答えることができるが、Wikipediaにはそれができない。

 これは確かに面白いことだが、問題はユーザーがそれを気にするのかどうかだ。エンドユーザーにこの違いがわかるだろうか?わからないだろう。現在、Wikipediaには大量の話題に関する信頼の置ける参照情報がある。Googleのように、検索しやすく適切な情報を探すこともできる。そのため、人々がよりよい別のWikipediaを必要とするとは思えない。Twineでは、状況は異なるかもしれない。人物に関する知識管理は重要な問題だからだ。1つ目の疑問は、人物に関する効率的な知識管理を必要としている人は多いのか、ということだ。私は、その答えはだんだん「イエス」になってきていると思う。2つ目の疑問は、知識のセマンティクスを知ることは、最高のアプリケーションを作る役に立つかということだ。少なくとも、Twineはdel.icio.usのブックマークに勝てなくてはならず、理想的には人物に関する知識管理に関して、CRMにおけるHighriseのようにならなくてはならない。

 しかし、それを実行することの他にも問題がある。セマンティック知識ベースがキラーアプリケーションになるためには、人々の想像力をかき立て、心をつかむ必要がある。そうはなりそうにない。私は図書館の価値を知っているし、なしでは生きていけないと思うが、それを当たり前だと思っている。GoogleやWikipedia、ブログ界のおかげで、知識はコモディティ化しており、豊富でありきたりのものだと見られている。この理由で、セマンティックデータベースはキラーアプリケーションにはならないだろう。しかし、キラーアプリケーションへの踏み石にはなるかもしれない。

セマンティック検索

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 早い時期にセマンティックウェブ分野のキラーアプリケーションの候補だと考えられていたのが「検索」だ。最初はHakiaが、最近はPowersetがセマンティック検索エンジンのアイデアを広めており、これは自然言語を理解すればGoogleに勝てるという考え方に基づいている。高い品質の検索結果を出さなければならないというプレッシャーを受けている他に、セマンティック検索の企業は、少なくともある程度は自然言語を理解するという問題を解く必要があるが、前述の通りこれは難しい問題だ。

 現在の状況では、検索がセマンティック分野のキラーアプリケーションになるとは考えにくい。自然言語の理解はよりよい検索結果を得る上で、目立った強みになっているようには見えない。少なくとも、われわれが以前行った比較では、大きな違いはなかった。Googleが採用した統計的アルゴリズムは正確で十分な機能をもっている。だからGoogleは過去8年間ウェブ検索の分野で明らかにトップに立っていたのだ。Googleに打ち勝つには、検索機能に漸進的な進歩を加えるだけでは不十分であり、違ったウェブ体験を作り出すパラダイムシフトが必要となるだろう。以下では「発見」にどんな可能性があるかを議論するが、現在のところGoogleのアルゴリズムは十分優秀で強力だ。

ソーシャルグラフ

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 Tim Berners-Lee氏がソーシャルグラフに関する考えを記事に書いて以来、ソーシャルグラフは実際にセマンティックウェブなのかどうかを考える人たちの議論がウェブ上に出始めた。しかし、これはその記事を完全に誤解している。ソーシャルグラフはセマンティックウェブではなく、またセマンティックウェブのキラーアプリケーションでもない。これら2つは異なる概念だ。この混乱は、どちらも数学的なグラフネットワークであることから来ている。どちらも、基盤にしている構造はリンクによって接続されたノードからなる。自然界や社会の多くのものがネットワークなので、意味と人間がどちらもこのカテゴリーに属することは驚くにはあたらない。

 もし何か関係があるとすれば、巨大で包括的なセマンティックウェブの部分集合がソーシャルグラフだと言えば、より正確だろう。人々がどのようにつながっているかを知ることは、完璧なバケーション問題を解くためには重要だ。結局、完璧なバケーションは完璧な友人と過ごすべきものだから。冗談はさておき、ソーシャルグラフは2008年の重要で興味深い流れだが、厳密に言えばセマンティックウェブとは本当には関係していない。

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