佐俣:最近の日本の技術は元気がないと言われつつも、みなさんのように技術を分かっている方々が少しずつ出てきているのは事実ですよね。
西川:そういう人たちはずっといるので、増えてもいないし減ってもいないんじゃないでしょうか。ITという言葉が一人歩きして、誤解されたり、悪い面ばかりが取り上げられたりしたこともあるでしょうが、技術者たちはずっと開発を続けていたと思いますよ。
原田:世に出られるハードルは下がってる気はしますね。少ない資本で会社も作れますし、学生で起業するとマスコミが取り上げてくれたりするので(笑)。後押しする環境はあると思います。
佐俣:エンジニアが世の中に出てくる、育ってくるという意味では、教育の問題もあると思います。現在、大学に通っている立場、あるいは最近まで大学に通っていた立場として、教育に関して何か思うところはありますか?
大倉:日本の教育で一番問題なのは、先生が親切に教えてくれる、教えるべきだと思っている風土だと思います。
トップのエンジニアは芸術家みたいなものだと思っています。まわりに面白い人がたくさんいて、その中で刺激を受けながら自分の感性や技術を磨いていくのが大切なんじゃないでしょうか。
でも、最近の日本の学校は、東大でさえ先生はきちんと授業をしなさいという方向になってしまい、時間的な余裕がなくて、友達との共同作業を通じて刺激を受ける機会などないという人の話も聞きます。先生から学ぶというだけではなかなか優秀なエンジニアは育たないと思います。
原田:確かに時間的な余裕はもっとあった方がいいですね。自分の興味があることを勉強したいと思っても、学校の拘束時間が長くてできないこともあります。一方で、出席だけすれ単位が取れるという授業もあり、自分の興味とは関係なく単位を取るためだけに時間を使う人がいる、そこが問題かもしれません。
大学は先端的でおもしろいことをやっているはずなので、授業でそれを効率的に学べればいいのですが、そこに教える側と学ぶ側のミスマッチが起きているという非効率な側面があると思います。
西川:全体的な底上げという意味では丁寧に授業をしないといけないと思いますが、僕も優秀なエンジニアを育てるつもりなら時間的な余裕を与えてあげないとダメかなと思います。
佐俣:大学でゆとりのある教育ができたとして、高校まではどうなんでしょう。きっちりとカリキュラムがあって、試験科目に沿って勉強してきた人が、大学で急に変われるものなんでしょうか。
大倉:高校と大学の間に特に境はないと思います。僕も西川さんと同じように中学生の頃からフリーソフトを作って公開したりしてました。
ですから、中学や高校の時から自分で興味があることを勉強するのがいいんじゃないかと思います。もしかしたら、自分の興味があることを自分でどんどん勉強しなさいと教えていないことが、教育上の一番の問題かもしれないです。
佐俣:では最後にみなさんにお伺いします。今後はどうしていきたいですか?
西川:我々の会社では世界を変えられる技術をずっと探し続けていますが、それを見つけて、いつかコンピュータで世界を変えたいと思います。その目標に向けて今後もやっていきたいと思います。
大倉:直近は自分の手を動かすことになると思いますが、自分が直接でなくても、人類が情報をより良く活用できるようになるために努力していきたいと思います。どこの会社に所属するとか、起業するとかにこだわりはなく、常に自分の目標に対して最適な環境に身を置いていきたいと思っています。
原田:今までの経営論では技術を中心として扱うことが難しいと思うので、リスクのある技術開発というファクターを含んだ会社経営を考えつつ、自分でも技術を開発していきたいと思います。3年後か5年後か分かりませんけど、それくらいに起業できたらいいですね。IPOにはこだわらず、その会社が継続的に技術開発を続けてやっていけたら理想ですね。
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