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いい技術とは何か--日本人学生エンジニアの激論160分(後編) - (page 2)

佐俣アンリ、文:田中誠2008年01月17日 11時31分
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佐俣:先ほども少し話に出た、技術を商品として売っているなら技術を学んでいる人がマネジメントをしないとダメということですよね。

西川:ただ、ITという言葉に関しては、その意味が広すぎる感じはしますね。コンピュータを使うものはみんなITと呼ばれて、検索連動型の広告もITですからね。それぞれが違う資質を持っているのに、みんなまとめてITで語ろうとするのはムリがあると思います。

 検索連動型広告の分野に関してなら広告に詳しい人が必要でしょうし、我々の会社のように検索エンジンのコア技術を売っているところは技術が分からないとダメだし…。世の中でのITという言葉の使われ方には疑問を感じますね。

「日本のIT技術は元気だぞ」

佐俣:ソフトバンクの孫さんやライブドアのホリエモンなど、比較的キャラの濃い人たちがIT業界を注目させた功績は大きいと思いますが、一方で彼らが急に注目されたことで、サービスと技術をごちゃ混ぜに考えてしまうような、IT全体をよく分からないものにしてしまった気もするんですが…。

原田:最初からよく分からないものだったわけではなく、ITがものすごい勢いで進化しているので、その進化に世の中の理解が追いついていないところに歪みが発生してるんじゃないでしょうか。

大倉氏 「先生から学ぶというだけではなかなか優秀なエンジニアは育たないと思います。トップのエンジニアは芸術家みたいなものだと思っています。まわりに面白い人がたくさんいて、その中で刺激を受けながら自分の感性や技術を磨いていくのが大切なんじゃないでしょうか」(東京大学大学院の大倉務氏)

大倉:IT業界という言葉はちょっと変だと思います。普通は化粧品など商品に対して業界という言葉を付けますが、ITはその仕組みの方に業界を付けて呼んでいます。用語を普及させる時に何かずれてしまったのかもしれません。

佐俣:日本の技術に元気がない、オリジナリティがないという意見もあるようですが、それに関してはどう思いますか?

原田:技術を加工してサービスとして出すという意味だったら車などの例もありますし、オリジナリティのなさを気にすることはないと思います。元気があるかないかで言えば、元気はあると思いますよ。

大倉:日本発のオープンソースソフトで世界で使われているものはたくさんあるので、そういう意味では「日本のIT技術も元気だぞ」と言っていいと思います。

 ただ、サービスに元気がないというのは同意します。やはり海外の真似をしてるサービスが多い印象があるので。そういう海外の真似をするのも悪くない、日本らしい、という意見もあると思いますが、個人的にはあまりうれしくないです。これまで日本がそうやって成長してきたのは分かるし、ビジネスの戦略としてそれが間違っているとも思わないですが、やっぱりうれしくない。

佐俣:そこはエンジニアとしてのプライド、もしくは技術開発する上でのモチベーションの問題なんですかね?

大倉:世界の誰かがやってしまったことは、少なくとも人類に可能だということは分かっているわけで、不可能への挑戦という意義はなくなりますよね。それを考えると、エンジニアとしては是非全く新しいものを作りたいという気持ちはあります。

西川:サービスはITの中の一部分でしかないと思っているので、そのサービスだけを見て元気がないと言われてもどうなんだろうという気はします。

 ただ、そのサービスが正しいものを出せていないのは技術の空洞化が原因でもあると思うので、我々はその技術部分の穴を埋めて、サービスを強くしたいと思っています。

 今も検索エンジンという技術的な部分を作って、サービスを求める人たちのニーズを受け取りながらくっつける作業をしてるので、そういうことをしていけばサービスも活性化してオリジナリティが出せるんじゃないかと思います。要するに、技術がないなら僕らが埋めてあげるというのが会社の方針ですからね。

原田:大倉さんの話を聞いていて思ったけど、真似が真似で終わってるからダメなんでしょう。Webサイトなどを見ても日本の方がセンスがあったりするケースは多いので、二次利用のクリエイティブ能力は高いと思うんですよ。

 そういう部分を進化させて、たとえばブログを輸入するだけじゃなく、ユーザーインターフェイスを洗練させて逆輸入させるくらいの付加価値が出せれば、サービスも元気があると言われるんじゃないでしょうか。

より高い価値と新しい概念

佐俣:ちなみに良い技術というのはいろいろな側面があると思いますが、具体的にはどんな技術だと思いますか?

西川:価値が与えられないと技術としては意味がないので、どれだけ高い価値を与えられたかということだと思います。我々は技術者として、たとえばコスト的なもの、機能的なものなど、いろいろな面を追求していくわけですが、そういうことを総合的に考えてどれだけ高い価値を相手に提供できるかどうか、それが良い技術だと思います。

原田:基本的にはやはり価値の話になると思いますが、その技術を良いと判断する人に対して、どれだけ新しい概念をインストールしてあげられるかどうかが基準になると思います。

 研究者から見れば今まで世の中にはなかった技術が良い技術になると思いますし、サービスを使う人から見れば、ユーザーとして新しいことが経験できるものが良い技術になると思います。そういう概念的に新しいものが良い技術なんじゃないでしょうか。

大倉:僕もより高い価値を生み出せるものだと思います。ただ、その技術にも種類があって、たとえば電話のような技術は遠くにいる人と話せるという技術でしたが、そのことによって世の中の進むスピードは一気に上がりましたよね。電話によって派生された技術はたくさんあると思います。電話がなければ今の時代にはまだPCはなかったかもしれませんしね。こんな風に、より派生的にたくさんのものを生み出せる技術ほど良い技術なんじゃないかと思っています。

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