いい技術とは何か--日本人学生エンジニアの激論160分(後編)

佐俣アンリ、文:田中誠2008年01月17日 11時31分
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 日本人学生エンジニアが「いい技術とは何か」を軸に討論する座談会(西川氏は2007年3月に卒業)。前編では技術と経営、エンジニアの社会的地位などに言及した。後編では主題となる「いい技術の本質」、脆弱と指摘される日本のIT業界、いいエンジニアを育てるための教育を中心に激論が展開された。

「76世代」などとは違う新たな流れ

佐俣:西川さんみたいにすごい技術力を持った人が経営もしっかりできるのが理想だと思いますが、現実的には文系の人が経営のトップに立ったりしますよね。どうすればいいんでしょう。技術系の人が経営を学ぶのか、文系の人に技術を学んでもらうのか。

大倉:たとえばお花屋さんチェーンの社長は、商売に詳しい文系の人がなるのが当然だと思います。でも、技術を売りにしている企業だったら自分の会社の技術をちゃんと理解できる経営者こそ、その技術を活かせると思います。

 今までの技術者が自分たちは経営に携わることなんてないと思って経営の勉強をしなかったのか、あるいは会社側が経営者候補として技術者を見てこなかったのか、それは分からないです。でも、技術系の企業なら技術者が経営も学んで経営者になるというのが自然だと思います。

佐俣:大倉さんも将来的には経営の方へ行く可能性はあるんですか?

西川氏 「ITという言葉の意味は広いです。ところがコンピュータを使うものはみんなITと呼ばれて、検索連動型の広告もITですからね。それぞれが違う資質を持っているのに、みんなまとめてITで語ろうとするのはムリがあると思います」(プリファードインフラストラクチャー代表の西川徹氏)

大倉:将来的にはそうなりたいと思っています。自分で起業するかどうかは別にして、エンジニアに固執するつもりはないです。

 先ほどの西川さんの話に近いですが、手段は選ぶけれども目的を達成することが何よりも大事だと思っています。マネジメントや経営を学んで、自分と同じかそれ以上の技術力をもった部下を持てる立場になれたら、自分はマネジメントをする側にまわって目標の実現に向けて進んでいきたいです。

原田:大倉さんのやり方は比較的昔からあるタイプで、西川さんが新人類なのかな。カルロス・ゴーンもミシュランに入って、社長や会長をやって、車のことも経営のことも学んで、それから日産に出向して立て直す、という道を通ってきたらしいけど、それって大倉さんのスタイルに近いと思う。

 西川さんはその途中の社会経験の部分を飛ばしているので、今までになかったケースかもしれませんよね。ITバブルに端を発した2000年前後の起業ブームとか関係なく、そういうことが技術の分野でも可能になってきたんじゃないでしょうか。第3世代とはまったく違う波が来てるような印象もありますね。第3世代はサービスで、この波は技術ですから、一緒ではないような気がします。

西川:マイクロソフトもアップルもそうでしょうから、昔からあったとも思いますけどね。

原田:いや、やっぱり出てくる例は外国のケースばかりで、日本ではなかったんじゃないかとおもいます。詳しく調べたわけではないですが…。

大倉:日本にはあまり例がないと言っても、シリコンバレーには世界中の優秀な技術者が流れ込んでいるわけですから、単に人数の問題なのかもしれません。

技術が分からない経営者でどうする

佐俣:優秀な人が多ければ当然生まれてくるだろうということですね。

大倉:はい。しかも、優秀な人に出会ったから何かが起きるというケースも考えると、人数の二乗に比例するかもしれませんから、そうなると益々比率は違って来ますよね。

 日本の法制度なども関係してるとは思いますが、シリコンバレーはそもそも優秀な人たちが世界中からたくさん集まってくるから何かが起きているのかな、と思っています。

佐俣:なるほど。西川さんも優秀なメンバーに出会ったのは大きいんですよね。

西川:そうですね。逆に言うと、人と出会ってなければ会社は作っていないと思います。やっぱり最初に一緒にスタートできる仲間を見つけるのが重要だと思います。

 でも、日本でもプログラミングコンテストなどで出会う機会はありますし、今はインターネットがあるんだから、日本もアメリカも関係なく、チャットとかで気が合ったら起業するというのもアリなんじゃないですかね。そこにも国境はなくなっていくと思います。

佐俣:西川さんのような人も技術者と経営者の卵がうまく出会うキッカケがあれば自然発生的に生まれていくんでしょうか。それは必ずしも会社設立を前提としたものでなくてもいいとは思いますが…。

大倉:エンジニア同士が何人か集まって何かを作るようなケースは無尽蔵にあるので、それを会社という形にする理由があるかどうかどうかでしょうか。何人か集まって何か作るだけだったら会社にする必要はないわけですから。

原田:好きでプログラミングをしているような人は、それがお金になることを知らなかったり、知っていても資本を持っている人とマッチングしなかったりしてるように感じますね。そのあたりが解消されるだけでもそういう若い人が世に出てくるキッカケにはなるような気がします。

佐俣:どうすればそれは解消できるんでしょうか。

原田:VCに関しては佐俣さんの方が詳しいと思いますが、やはりベンチャーキャピタリストの方もどこに行けばそういう若い人と会えるのかという悩みはあるらしいです。VCも学生も、両方探し求めているのにうまく会えないというジレンマはあるんじゃないでしょうか。

佐俣:そうですね。その壁はありますね。でも、最近はずいぶんなくなってきてるような気もします。経営者と学生が飲んだりする場もあったりするので、それこそ確立論で、そういう場が増えればいつか何かが生まれる感じもしますね。

大倉:僕は単に経営者とエンジニアをくっつければいいという話ではないと思うんです。先ほども言ったようにエンジニアの中からマネジメントできる人材を輩出していかないとうまくいかないことは多いと思うので。

 未踏ソフトウェア創造事業などがそれなりにうまくいっているのは、エンジニアに直接お金を出すからだと思います。その結果、未踏関連では新しいものが生まれる比率が高句なっているのではないかと思います。

 技術は全く分からないけれど、技術を売りにする企業の経営はできる人というのは少ないと思います。技術を分かっている人に経営を付加するというアプローチが必要じゃないでしょうか。

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