ゲーム業界の多様化はビジネスチャンス--スクエニが狙う業界首位の座 - (page 2)

――ネットワーク端末としてみると、ニンテンドーDSとプレイステーション ポータブル(PSP)が先鞭だったわけですが、これらにもダウンロードコンテンツを供給する可能性はありますか。

 ダウンロード型のビジネスモデルに変化していける余地があるのはPSPですね。DSはストレージ機能がありません(※編集部注:ニンテンドーDSの場合、カードメモリ容量が少ないなどの理由から、ダウンロードコンテンツを保存してゲームを進化させることが難しい)から、かなり大きなモデルチェンジがない限りは難しいでしょう。データダウンロードによる遊びの広がりは大きいですから、PSPはこの先面白い展開になるでしょう。

――ニンテンドーDSは市場が成熟してきています。御社はDS:Styleのような非ゲーム分野のタイトルにも進出しているようですが、通常のゲームだけではビジネスが難しくなってきているということでしょうか。

 いえ、ゲーム機としても、もっと拡大が狙えるマーケットでしょう。ドラゴンクエストのリメイク版や、「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト」、「すばらしきこのせかい」などのようなタイトルも継続して提供しています。

 ただ、こうした方向とは別に、ニンテンドーDSはお客様に新しいメディアとしても認知されている。携帯電話が単なる電話機ではなくなったときのように、ゲーム機がゲームだけではない、独自のメディアとしてとらえられ始めているというのが、ニンテンドーDSの裾野の広さという意味です。

 また書籍の例えになるのですが、ニンテンドーDSは、カッパブックスのような実用新書が出てきた時の流れに非常によく似ていると思うのです。それ以前は単行本と専門書、あとはリメイク廉価版の文庫しかなかった。単行本の企画も、「こんなネタは本にはできない」という業界の暗黙の了解のようなものがあった。

和田洋一氏

 そこに突然、実用新書というものができた。今まで単行本化されなかった「冠婚葬祭入門」や「頭の体操」のようなベストセラーが次々と出てきたわけです。これは、まさに今ニンテンドーDSがたどっている道と同じといえるでしょう。今後はDSにも“トンデモ本”みたいなソフトも出てくるのではないでしょうか。心霊スポットを調べるようなものとかですね(笑)

 とはいえ、実用新書も書籍のひとつです。いまだに専門書や単行本という分野も健在なわけですから、ニンテンドーDSでもがっちり遊べるゲームがなくなるというわけではないと思います。非ゲーム的なソフトから入ったお客様も、ゲームに手を出すことはあるはずです。カッパブックスから入って本格的な文学を読む人もいたわけですから。実際、実用新書ブームの後には本の出版総数は増えているはずです。

――直近の半年間を見ると、フランチャイズ(過去のシリーズの続編)が多い印象を受けました。

 新作を投入していないわけではありません。ただ、フランチャイズやリメイクと新作は両面で回さないといけない。リメイクをするにしても、タイトルの世界観を広げて枯らさない努力が必要です。

 これまでの利益構造を見ると、フランチャイズ系が6割、新作が4割程度です。スクウェア・エニックスという会社はドラゴンクエストやファイナルファンタジー(FF)のキャラが立ちすぎているために依存度が高いと誤解されていますが、これらのタイトルの貢献度は半分を切っています。

 にも関わらず、我々ばかり「ドラクエの新作は」「FFの新作は」と聞かれる(笑)。今までのものをやっていかないわけではありませんが、相対的に依存度は減らすようにはしています。トヨタの決算発表で「次のカローラはいつ出ますか」なんて聞かないでしょう。単品事業の単品タイトルのみで上場したころのイメージが強すぎるのでしょうね。

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