ゲーム業界の多様化はビジネスチャンス--スクエニが狙う業界首位の座 - (page 3)

――携帯電話についての展望も聞かせてください。

 携帯電話はあくまで「コンテンツも載る端末」なので、これから大きな伸びが期待できるということはないでしょう。もちろん、モバゲータウンのようなスタープレーヤーが登場するといった現象はあるかもしれませんが。

 ただ、日本では成熟していても、世界的に見ればまだ拡大の余地がある。ロシア、中国、インドなどで端末のスペックが上がれば、コンテンツが載る余地が出てきます。今は日本の携帯電話が高性能すぎます(笑)

――昨年のインタビューでは、デジタルテレビへの展開についても伺いました。その後アクトビラなどのサービスも始まりましたが、これらへのコンテンツ供給はどのように考えられますか。

 テレビの分野にどうやって入っていくかについては、かなり模索していました。松下電器産業とも話をしていましたし、通信業界の方とも水面下でいろいろなやりとりをして、どのレイヤーで商売ができるのか考えた結果、やはり我々はコンテンツ屋に徹するべきだという結論に至りました。インフラが整うまでは、どこにでも出せるようなコンテンツを作ることに徹するべきだと。

 デジタルテレビでは端末側に重い処理をさせるのは難しいでしょうから、サーバ側からコントロールするようなゲームデザインにしないといけない。ここだけ注意しておけば、どんなインフラがきても大局には影響はないでしょう。

――連結子会社のタイトーが担当するAM事業(ゲームセンター運営)については、1月の決算発表でロケーション強化策を打ち出していました。効果は出てきましたか。

 既存店売上高の前年同月比で見ると業界トップの座にあり、同業他社とはどんどん差が開いています。そういう意味では成果が出始めています。「ちょっと歩いてでも行きたくなる店舗」という考え方は継続していますし、現在はブランドの統一も図っています。タイトーの店舗はブランドがばらばらで、タイトーという文字のない店舗も多かったのですが、これをすべて改めます。

2008年3月期の中間決算で明らかにされた、タイトーの既存店売上高の前年同月比 2008年3月期の中間決算で明らかにされた、タイトーの既存店売上高の前年同月比

――タイトーの持ち味は業務用ゲーム機にもあったと思いますが、こちらの新規展開は。

 シェアを完全なものにしてから投入しようと思っています。動きはあり、近日中に発表できるものもあります。ただ、とにかく品質管理を徹底することにしています。納得がいくまでは出さないということで、差し止めている案件もいくつかあります。これらも1〜2年経てば成果は出てくると思います。

――5年先までの中長期的な展望を教えてください。

 ゲーム産業自体は今までお話しした通り、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機、その他PC、携帯電話などを含めて広がっていくと思います。我々はゲーム産業の中でのトップを目指していきたい。さすがに5年でトップというのは難しいとは思いますが、世界のベスト3には入りたい。

 そのためにはお客様との接点を増やすのがひとつ。もうひとつはコンテンツを「薄くしない」ことが重要です。それぞれがお客様との太いつながりを持っていないといけない。たとえばFFのファンが100万人いたとして、これを1億人に増やそうとは思いません。今FFが狙っていないターゲットには、別のコンテンツで強くつながるようにしたい。

 1000万人のお客様を2000万人にするためにライトユーザーでも入りやすいようにしようとか、低年齢層を狙うためにキャラをデフォルメしようとか、そういう方策ではいけない。そうしてしまうと、お客様とのつながりが全体的に薄くなってしまうんですね。個別のコンテンツではなく、会社として全ての客層とつながっていればいいんです。

――今後、ゲーム市場は多様化によって、より混沌とするのでしょうか。

 多様化することでチャンスが広がっていくと思います。自動車産業を考えてみてください。T型フォードの時代には自動車といえば1車種しかありませんでしたが、GMの時代になると多種多様な車種が出てきました。セダンがあったり、トラックがあったり。GMはユーザーセグメントに応じて最適なモデルを投入していったんです。これによって自動車産業は飛躍的に拡大を遂げました。

 この状況が混乱であったかというと、そうではないですよね。ゲーム産業も、ちょうどこの前世紀の自動車産業と同じ道をたどるのではないかと考えます。今のゲーム屋からすると「なぜこれがゲームなんだ?」というモノもでてくるかもしれません。

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